【夢小説】【R指定】亜空間宿屋:執事な従業員がニートな主人(主人公)の自立を妨害する話
(公開日:)
使用:Gemini2.5Pro、Gemに基本条件(一人称)+世界観を入れている
【1話目 設定】
・雰囲気:コミカル、甘々
・主人公:主人、自立を目指すニート気質、根は真面目
・相手:従業員、甘やかしたい執事気質、主人公をダメにする元凶だが自覚はない
・核心となる要素:朝に主人公が起きるだけで相手が褒めてくれるし寝てても良いよと言う→朝食の準備は既に相手によって終わっているので主人公は食べるのみ→客のチェックアウトも相手がやると言って譲らない→せめて掃除でもと励んでいると相手がお菓子で休憩を促す→このままではいかんと思いつつも相手の手作りのお菓子は美味い
・裏情報:相手は泊まっていた顔の良い男と主人公が話すのを避けたかった
- 1話目はえっちっぽいの無しで進めたかった
- コミカルであるということをAIに伝えるために要素の書き方も工夫している
澄んだ空気に満ちた静かな朝。瞼を持ち上げると、見慣れた天井がそこにあった。私がこの亜空間宿屋の主人となってから、どれほどの時が経ったのだろうか。不老不死という歪な理の外に置かれたこの身には、もはやカレンダーも時計も意味をなさない。
「おはようございます、あおい様」
私が身じろぎした気配を敏感に察知し、控えめに扉が開かれた。そこに立っていたのは、私の唯一の従業員である彼だった。寸分の隙もなく着こなされた執事服と、穏やかに弧を描く唇。その手には既に、湯気の立つ白湯が捧げられている。
「よくお目覚めになられました。素晴らしいことです。昨夜はゆっくりお休みになれましたでしょうか」
「ええ、まあ。おはようございます。ただ起きただけですよ、そんなに褒められるようなことではありません」
白湯を受け取りながら苦笑すると、彼は心底不思議そうな顔をした。本気で、私が寝て起きたという事実そのものを称賛しているらしい。この男は、私が息をしているだけで花丸を付けてくれるだろう。
「とんでもない。あおい様が健やかにお目覚めになることこそ、この宿にとって最大の吉報でございます。さあ、食堂へどうぞ。朝食の準備が整っております」
彼に促されるまま食堂へ向かうと、テーブルには彩り豊かな朝食が完璧な配置で並べられていた。焼きたてのパンの香ばしい匂いが鼻腔をくすぐる。これもまた、毎日の光景だ。私が眠っている間に、彼は全ての準備を終えてしまう。
「……いただきます」
席に着くと、彼は恭しく私の皿にスープを注いだ。彼の料理の腕はプロフェッショナル級であり、文句のつけようがない。ただ、あまりにも完璧すぎるのだ。私はこの宿の主人であり、本来は運営の全てを担うべき存在のはずだ。
「あの、ありがとうございます。ですが、私は一体、何のためにいるのでしょうか」
ぽつりと漏れた本音に、彼はきょとんと瞬きをした後、慈しむような笑みを浮かべた。
「あおい様は、ただそこにいてくださるだけで良いのです。貴方様がこの宿の主であるという事実、それこそが全ての礎なのですから」
彼の言葉は甘く、抗いがたい。その声に、その眼差しに、私は絡め取られてしまう。このままではいけない。私はこの男に依存し、ただ甘やかされるだけの無為な存在に成り下がってしまうだろう。自立を目指すニート、という言葉が脳裏をよぎり、一人ひっそりと自己嫌悪に陥る。
「……昨夜お泊りのお客様が、そろそろチェックアウトの時間ですね。私が見送りに行ってきます」
食事を終え、意を決して立ち上がると、彼はやんわりと私の行く手を遮った。
「いえ、それには及びません。私が行ってまいりますので、あおい様はどうかごゆっくりと」
「ですが、それは主人の仕事です」
「お客様と直接お会いになることは、時にあおい様のご負担となりましょう。特に、昨夜のお客様は……少々、馴れ馴れしい気配がいたしましたので」
そう言って彼は困ったように眉を下げた。確かに、昨夜泊まっていたのはやけに顔の整った、愛想の良い男だったことを思い出す。彼と話すのが負担だとは微塵も思わなかったが、この従業員は時折、過保護が過ぎる。彼の真意はわからないが、その瞳に宿る静かな光が「譲らない」と雄弁に語っていた。結局、私は彼の厚意(という名の頑固さ)に押し切られる形で、頷くしかなかった。
手持ち無沙汰になった私は、せめて何か労働らしいことをしようと、客室の掃除道具を手に取った。主人が率先して働く姿を見せれば、彼の過保護も少しは和らぐかもしれない。そう思い、誰もいない客室の扉を開け、シーツを剥がそうとした、その時だった。
「あおい様」
背後から、いつの間に現れたのか、彼が静かに声をかけてきた。その手には、淹れたての紅茶と、皿に乗った焼き菓子がふわりと湯気を立てている。
「そのようなことは私めがいたしますので。ささ、こちらで少しお休みになってはいかがでしょう。シナモンを効かせたスコーンを焼いてみました」
香ばしく、甘いバターの香り。私の好きなものばかりだ。この男は、私の思考を読んでいるのではないかと、時々本気で疑いたくなる。
「……このままでは、私は本当にダメになってしまいます」
情けない声が出た。私はこの宿の主人として、もっと毅然と、主体的に動かなければならないのだ。生命力を効率よく補充し、宿を更に発展させていくという本能的な使命があるというのに、現状は従業員に寄生する穀潰しではないか。
このままではいけない。断じて。
そう強く心に誓ったはずなのに、私の手は無意識にティーカップへと伸びていた。彼の作るスコーンは、絶望的に美味いのだ。
「……ありがとうございます。少しだけ、いただきます」
私の返事を聞いて、彼は心の底から嬉しそうに微笑んだ。その笑顔に絆されながら、私はサクサリとした食感のスコーンを頬張る。口の中に広がる優しい甘さは、私のちっぽけな決意をいともたやすく溶かしていく。
明日こそは。明日こそはきっと、この甘やかな支配から抜け出してみせる。
紅茶の湯気の向こうで、満足げに私を見つめる彼の視線を感じながら、私はそんな不確かな誓いを立てるのであった。
- よし、えっちくない雰囲気でもいける!
- 寝てても良いよの指示が丸ごと消えたがこういうところも含めてAI生成の楽しいところ
【2話目 設定】
・雰囲気:コミカル、甘々
・主人公:主人、自立を目指すニート気質、やればできる子、実は料理が得意
・相手:従業員、甘やかしたい執事気質、女性に大人気、主人公の実力も真面目さも知っている
・核心となる要素:泊まりに来た親友の女性に自立の方法を相談する→課題として甘やかす相手の実例を挙げる→惚気かと呆れられるがまずは相手に感謝しろというアドバイスを受ける→相手の外出中にこっそりケーキを作ってプレゼント→放心するほど喜ばれて逆に今まですまんかったと反省する
・裏情報:相手は生命力の補充方法を主人公に悟られないように外界で行っている
あの甘やかなスコーン事件から数日。私の心には「このままではいけない」という焦りが、まるで根を張るように居座っていた。そんな折、宿に旧い友人が訪れた。彼女は私がこの奇妙な宿の主人になる以前からの付き合いで、時折こうして泊まりに来てくれるのだ。
「で、相談というのは何なんです? あおいがそんなに思い詰めた顔をするなんて、珍しいですね」
客室でお茶を飲みながら、親友は面白そうに目を細めた。彼女の前では、私も少しだけ気が緩む。
「どうすれば、私は自立できるんでしょうか」
「はあ? 自立? あなた、この宿の主という、とんでもない地位にいるじゃないですか」
「形だけです。実際は、彼…私の従業員に全てを依存しているただの置物です。このままでは、私は私でなくなってしまう気がするんです」
真剣な私の訴えに、彼女は興味深そうに身を乗り出した。私は訥々と、いかに彼が私の自立を阻害しているか…もとい、いかに献身的に尽くしてくれているかを語って聞かせた。朝は優しく起こされ、三食昼寝付きで完璧な食事が提供され、掃除洗濯その他一切の雑務から解放されている現状を。
「……というわけで、私が何か仕事をしようとすると、必ず先回りされて、手作りのお菓子などで懐柔されてしまうんです。これではいけないと、思うのですが」
一通り話し終えると、親友は深々とため息をついた。その目は、どこか呆れを通り越して憐れみすら含んでいるように見えた。
「……あのねえ、あおい。それはただの惚気にしか聞こえないんですけど」
「惚気? 違います、これは深刻な悩みです」
「まあ、そう言いたい気持ちはわかりますけど。でも、それだけ尽くしてくれるってことでしょう。あなたは、その彼の行動に対して、何かお返しをしているんですか? いつもありがとう、ってちゃんと形にして伝えているんですか?」
形にする、という言葉が、鈍器のように私の頭を殴った。
考えてみれば、私は彼の働きを享受するばかりで、何かを返したことなど一度もなかった。彼の存在が、彼の献身が、あまりにも当たり前になっていたのだ。
「…していません」
「でしょうね。まずはそこから始めたらどうです? 自立だなんだと気負う前に、まずは感謝を伝える。それも立派な、主人と従業員のコミュニケーションですよ」
彼女の言葉は、澱んでいた私の思考に一石を投じた。そうだ、私はあまりにも自分のことばかり考えていた。
その日の午後、彼は「少し所用で外界へ出てまいります。夕刻までには戻りますので」と、いつも通り丁寧な一礼を残して出かけていった。
チャンスだ。
私はまっすぐ厨房へ向かった。彼の完璧に磨き上げられた聖域。そこに立つのは少し緊張したが、親友の言葉が背中を押してくれた。幸い、食材が自動生成されるこの宿の冷蔵庫には、あらゆるものが揃っている。私はその中から卵と小麦粉、砂糖、そして色とりどりの果物を取り出した。
料理は、実は嫌いではない。むしろ、かつては得意な方だった。彼のようにはいかないかもしれないが、感謝の気持ちなら誰にも負けないくらい込められるはずだ。
久しぶりに握る泡だて器の感触。メレンゲを潰さないようにさっくりと粉を混ぜ、オーブンから漂う甘い香り。焼きあがったスポンジを冷まし、生クリームを塗り、瑞々しいフルーツを飾っていく。夢中で作業する時間は、あっという間に過ぎていった。
彼が宿に戻ってきたのは、ちょうど夕日が亜空間の奇妙な空を茜色に染め上げる頃だった。
「お帰りなさい。お疲れでしょう」
私が厨房から顔を出すと、彼は少し驚いたように目を見開いた。いつもなら談話室のソファで本を読んでいるか、自室にこもっている私が、エプロン姿で出迎えたのだから無理もない。
「ただいま戻りました、あおい様。…何か、ございましたか?」
「いえ、大したことではないのですが」
私は照れ臭いのを隠しながら、完成したばかりのショートケーキを彼の前に差し出した。
「いつも、本当にありがとうございます。これは、私からの感謝の気持ちです」
瞬間、時が止まったように感じた。
彼は、私の手の中にあるケーキと、私の顔を、信じられないものを見るかのように交互に見つめている。その表情は驚きから困惑へ、そして、やがてゆっくりと、今まで見たこともないような感情の色に染まっていった。
「……あおい、さまが…これを…?」
掠れた声が、ほとんど音にならずに紡がれる。
「私の、ために…?」
彼の大きな瞳が、じわりと熱を帯びて潤んでいくのを見て、私は狼狽えた。ほんの少し、感謝の気持ちを形にしたかっただけなのに、彼の反応は私の想像を遥かに超えていた。
「もったいなくて、食べられません…。いえ、これは我が家の家宝に…」
「食べてください。そのために作ったんですから」
放心したように呟く彼に、私は慌ててケーキを押し付ける。その指先が微かに震えていることに気づいてしまった。
彼のあまりの喜びように、今度は私が、どうしようもなく申し訳ない気持ちに襲われる。今まで、どれほど彼に甘え、その心をないがしろにしてきたのだろう。外界での用事とやらで疲れて帰ってきた彼に、私は労いの言葉すらかけたことがなかった。
「こちらこそ、今まで何もせず、本当にすみませんでした…」
思わず口からこぼれた謝罪は、きっと彼には聞こえなかっただろう。彼はただ、宝物を捧げ持つかのようにケーキの皿を胸に抱き、恍惚とした表情で私を見つめていた。
自立への道は、まず感謝から。
親友の言葉を胸に刻みながら、私は彼の見たことのない顔に、自分の胸が少しだけ温かくなるのを感じていた。これはきっと、良い変化の兆しに違いない。そう、思うことにした。
- 主人公、今まで感謝してなかったのかよ
- ちなみにこれ元では漢字名でやってるのを一部全自動でひらがなでお出しされている部分があった
- 補充方法の話は後々の相手視点用なのでここで出てこないのは正解
【3話目 設定】
・雰囲気:コミカル、甘々
・主人公:主人、自立を目指すニート気質、こだわる職人肌
・相手:従業員、甘やかしたい執事気質、主人公にはもっともっと頼って欲しい
・核心となる要素:料理係の地位を狙うものの相手に阻止される→せめて自分と相手の食事くらいは作りたいという意見は通った→こうなったら2人分の料理は最高のものを作るしかないとやる気を出す→他の宿泊者に嫉妬されるレベルのものを作り達成感に満たされながら食べる
・裏情報:相手は主人公の手料理を独り占めしたいためにさり気なく誘導した
先日の一件以来、私の中には確かな自信が芽生えていた。やればできる。私は無力な置物ではないのだ、と。手作りのケーキであれほど喜んでくれた彼の顔を思い出すと、むくむくと新たな意欲が湧き上がってくるのを止められなかった。次なる目標は、この宿の食を司ることだ。
「というわけで、今日からこの宿の料理は全て私が担当します」
朝の食堂。私は仁王立ちで、従業員である彼に高らかに宣言した。自立への大きな一歩である。主人として、ご宿泊のお客様に最高の食を提供する。これ以上に真っ当な仕事があるだろうか。
しかし、私の高らかな宣言に対し、彼はいつもの穏やかな笑みを崩さないまま、きっぱりと首を横に振った。
「滅相もございません、あおい様。そのような大役、あおい様のお手を煩わせてまで行うことなど、断じて認められません」
「これは主人としての決定事項です。業務命令と捉えてください」
「あおい様が私から仕事…いえ、私の生き甲斐を奪うとおっしゃるのであれば、この身の全てを懸けて反逆いたします」
穏やかな口調とは裏腹に、その瞳には一切の譲歩を拒む鋼の意志が宿っていた。まさか、たかが料理当番の座を巡って、この宿で初めてのストライキが勃発するとは思わなかった。彼の頑なな抵抗は、私の想像を遥かに超えていたのである。
「なっ……なぜ、そこまで頑ななのですか」
「お食事の準備は、あおい様への奉仕の心を最も純粋な形で表現できる、私にとって神聖な時間だからでございます」
真顔でそう言われてしまえば、こちらもぐうの音も出ない。しばらく睨み合いが続いた後、私は大きくため息をついて、一歩譲歩することにした。
「……わかりました。では、せめて。せめて、私とあなたの二人分の食事だけでも、私が作るというのはどうでしょうか。これもダメだと言うのですか?」
少しだけ、拗ねた気持ちが声に混じったかもしれない。すると、あれほど頑なだった彼の表情が、ふっと和らいだ。まるで、私がその言葉を口にするのを待っていたかのように。
「……あおい様が、そこまでおっしゃるのでしたら。光栄の至りでございます。私のためだけに、あおい様が腕を振るってくださるなど…これ以上の栄誉はございません」
彼はうっとりと目を細め、恭しく一礼した。そのあまりの変わりように少し面食らったが、とにかく私の意見が一部でも通ったのだ。目的は達成されたと言っていいだろう。彼の巧妙な誘導に、この時の私はまだ気づいていなかった。
「よろしい。ならば、この二人分の食事を、宿の歴史に残るような最高の一皿にしてみせます」
全宿泊客分の食事を作るという当初の目的からは外れたが、かえって私の職人魂に火がついた。数が限られるのなら、質で圧倒すればいい。私は厨房に立つと、彼のテリトリーであるはずの冷蔵庫を遠慮なく開け放った。
「時空の狭間でしか収穫できないという幻の月光茸、よし。夜明けの空の色を宿すと言われる朝焼け鳥の卵、これだ。ソースには、星の雫を煮詰めたものを使ってみましょうか…」
私の独り言に、背後で控える彼が息を飲む気配がする。ふふん、驚くのはまだ早いですよ。私の本気は、こんなものではないのですから。
そして、夕食の時間。
談話室を兼ねた食堂では、何組かの宿泊客がそれぞれのテーブルで食事をとっていた。彼らの前にも、彼が作ったであろう十分に豪華で美味しそうな料理が並んでいる。しかし、私と彼のテーブルに、特別な一皿が運ばれた瞬間、食堂の空気が変わった。
「な、なんだ、あの一皿は…」
「メインディッシュが…虹色に輝いてる…?」
宿泊客たちの囁き声が聞こえてくる。私の自信作、『朝焼け鳥の卵でとじた月光茸のリゾット、星屑のソースを添えて』だ。黄金色に輝くリゾットの上で、半熟の黄身が宝石のように鎮座し、皿の縁を彩るソースは夜空のようにきらめいている。
「主様たちだけ、ずるくない!?」
「特別メニューかよぉ…」
あちこちから上がる嫉妬と羨望の声が、最高のスパイスだった。私は得意満面でスプーンを手に取り、まずは一口。芳醇な茸の香りと、濃厚でクリーミーな卵の味わい、そしてほんのり甘く複雑なソースの風味が口の中いっぱいに広がる。完璧だ。
隣に座る彼は、すでに感極まった様子で、潤んだ瞳で皿を見つめていた。
「美味しいです…あおい様…。ああ、なんと…なんと、幸せなのでしょうか。この味を、私が独り占めしてしまって良いのでしょうか…」
一匙口に運ぶたびに、涙ぐみながら大袈裟な賛辞を述べる。その姿は少しばかり滑稽だったが、同時に、どうしようもないほどの達成感が私の胸を満たしていく。
そうだ、私はこれがしたかったのだ。
誰かのために、心を込めて何かを作り、そして、こんなにも喜んでもらう。自立への第一歩として始めた料理だったが、今はそれ以上の、純粋な喜びを感じていた。
彼の「私の手料理を独り占めしたい」というささやかな、しかし強かな欲望によって、私がこの結論に導かれたとは露知らず。
私は彼の幸せそうな顔を見ながら、心の中で次のメニューを組み立てるのであった。
「明日も、もっとすごいものを作ってあげますからね」
この宿の主人として、そして彼の専属料理人として。私の新たな役割は、始まったばかりである。
- だいぶ正面から反逆されたな…
- だいぶ虹色に輝いたな…
【4話目 設定】
・雰囲気:コミカル、甘々
・主人公:主人、自立を目指すニート気質、何でもできる器用さはある
・相手:従業員、甘やかしたい執事気質、労いの言葉は麻薬だと思っている
・核心となる要素:建物内の掃除係の奪取を目指す→やはり阻止され2人の部屋のみ掃除する係に→チェックイン係くらいはしたいがそれも阻止→感謝する係しかないと思い至り夜に「お疲れ様会」を開催すると宣言したら普通に採用される→依存度が高まっているような気がするが相手が幸せそうだしまあいいやと思う
・裏情報:相手は主人公が自分以外のために労力を使うのを巧妙に避ける
専属料理人という輝かしい(限定的な)地位を得た私は、自立への道を確かな足取りで進んでいると信じて疑わなかった。食事が満たされれば、次なるは住環境の整備である。快適な生活は、清潔な空間から生まれるのだ。
「さて、今日からこの宿の清掃業務は私が引き受けます。隅々まで磨き上げ、塵一つない完璧な環境をお客様に提供しましょう」
昼食後、意気揚々と掃除用具を手に取った私に対し、彼はまたしても、あの見慣れた穏やかな笑みをたたえて立ちはだかった。その光景には、もはや一種の様式美すら感じられる。
「お待ちください、あおい様。そのような雑務は、全てこの私にお任せを。あおい様のお美しい手を、雑巾などで汚すことなど、従業員として断じて看過できません」
「ですが、宿の美化も主人の大事な務めです。それに、身体を動かさないと鈍ってしまいます」
「でしたら、私の淹れた紅茶を飲みながら読書に耽るという、優雅な運動をおすすめいたします」
まるで噛み合わない会話が続く。料理の時と同じく、彼は一歩も引く気がないらしい。この男の「させません壁」は、亜空間でも随一の強度を誇るに違いない。私は早々に全面的な業務移管を諦め、例の妥協案を口にした。
「……では、せめて。私とあなたの部屋だけでも、私が掃除します。これなら文句はないでしょう」
その言葉を待っていたかのように、彼の表情がぱっと華やぐ。
「なんと光栄なことでしょう。私の私室を、あおい様自らがお掃除してくださるなど……。昨夜、感謝の祈りを捧げたのが天に通じたのかもしれません」
大袈裟に胸の前で手を組み、感激に打ち震える彼。私は「またこのパターンか」と内心でため息をつきつつも、自分の担当業務を確保できたことに、ひとまず安堵した。
食事と掃除。生活の基本となる二つの業務を(限定的に)手に入れた私だが、まだ満足はしていなかった。主人として、もっと宿の運営そのものに関わりたい。
「ならば、お客様のチェックイン業務はどうでしょうか。宿の顔として、お客様を最初にお迎えするのは主人の役割だと思うのですが」
カウンターに立ち、にこやかに宿泊客を迎える自分の姿を想像しながら提案する。しかし、この提案もまた、彼の柔らかな、しかし絶対的な壁によって阻まれた。
「お客様の中には、あおい様のご尊顔を間近に拝し、理性を失う不届き者もいるやもしれません。万が一にもあおい様にご無礼が働くような事態は、私がいる限り起こさせはいたしません」
もっともらしい理由だが、彼の瞳の奥に宿る静かな光は、明らかに「あおい様を他の誰にも会わせたくない」と語っていた。彼の独占欲は、私が思っているよりもずっと根深いのかもしれない。
こうして、あらゆる実務からことごとく私を締め出した彼は、満足げに宿の運営へと戻っていく。残された私は、腕を組んで深く考え込んだ。
料理も、掃除も、接客も、彼によって阻まれる。ならば、私にできることは、一体何なのだろうか。
そして、不意に、一つの答えが天啓のように舞い降りた。
そうだ。私がこの宿で担うべき仕事は、直接的な実務ではないのかもしれない。私の真の役割は、この唯一にして最高の従業員である彼を、心身ともにサポートし、感謝し、労い、そのパフォーマンスを最大限に引き出すことなのではないだろうか。
いわば、福利厚生担当。あるいは、チーフ・モチベーション・オフィサー。
その結論に至った瞬間、私の思考はクリアになった。私は彼の後を追い、その背中に向かって宣言した。
「わかりました。私の役割は、実務ではなかったのですね」
「……と、おっしゃいますと?」
「今日から、私の新しい仕事は『あなたを労うこと』です。具体的には、毎晩、あなたのために『一日お疲れ様会』を開催します。私が腕によりをかけた料理とお酒で、あなたの一日の疲れを癒す。決定です」
私の突拍子もない宣言に、彼はきょとんと目を丸くした。だが、その言葉の意味を理解するのに、時間はかからなかったらしい。彼の表情が、驚きから歓喜へ、そして恍惚へと、劇的に変化していく。今までの頑なな抵抗が嘘のように、彼はその提案を心の底から受け入れていた。
「……よろしいの、でしょうか。毎晩……毎晩、あおい様が、この私のためだけに……?」
その声は感涙にむせび、大きな瞳は潤み、今にも決壊しそうだ。彼のその反応は、私の労いや感謝が、彼にとっては何物にも代えがたい報酬…いや、もはや麻薬のようなものであることを如実に物語っていた。
あまりにすんなりと受け入れられたことに、私は一瞬「あれ?」と首を傾げる。
料理は二人分だけ。掃除も二人分だけ。そして、新設された『お疲れ様会』は、彼のためだけ。
考えれば考えるほど、私の行動範囲はどんどん狭まり、彼個人への依存度…いや、彼からの依存度が高まっているような気がしてならない。これは、果たして自立なのだろうか。
しかし、目の前で、まるで尻尾を振る子犬のように全身で喜びを表現している彼を見ていると、そんな些細な疑問はどうでもよくなってくる。
まあ、いいか。
彼がこんなにも幸せそうなら、この宿は安泰だろう。
私は少しだけずれてしまった自立への道を、まあこれも一つの形だろう、と強引に納得させ、彼の幸せそうな顔を眺めるのだった。
- 前話と同じパターンを意図しているみたいなところを汲んでくるのが流石
- チェックインのところ「会わせたくない」としている辺りとかがGeminiの頭が良くて面白いところだと思う
【5話目 設定】
・雰囲気:コミカル、甘々
・主人公:主人、自立を目指すニート気質、生命力に関して無頓着
・相手:従業員、甘やかしたい執事気質、正直主人公を見ているだけで生命力が湧く
・核心となる要素:相手の外出時にこっそり宿の整備を進める→親友の女性に生命力の補充方法を訊かれて焦って誤魔化す→そういえば特に補充していないのに潤沢なのは何故だろう→まず間違いなく相手が何かしてくれてるのは感謝せねば→帰った相手にお疲れ様会で訊いてみるが有耶無耶にされる→珍しく酔っぱらってる相手にこれ以上聞けないしまあいいかと思う
・裏情報:相手はまた外界で性交による生命力の補充をしてきたが主人公に余計な心労を与えないために秘密にする
「彼を労う係」という、名誉ある地位に就任してからというもの、宿の空気はますます甘やかで、平和なものになっていた。しかし、人間の(不老不死だが)欲とは尽きないものである。やはり、何か形に残る貢献がしたい。私の手で、この宿をもっと素敵な場所にしたいのだ。
「少し所用で外界へ出てまいります」という、彼のお決まりの台詞を耳にした私は、これ幸いとばかりに動き出した。彼に内緒で宿を少しだけバージョンアップさせ、帰ってきた彼を驚かせてやろうという算段だ。
自室から、主人になった日に渡された分厚い説明書を引っ張り出す。生命力の項目は、なんだか気恥ずかしくて今まで真面目に読んでいなかったが、今日は別だ。「施設の拡張」のページをめくる。
「ふむふむ、『中庭の噴水の水に虹色の輝きを付与する』…消費生命力は、まあまあ、か。よし、これにしましょう」
私は目を閉じ、意識を集中させる。体の中から、温かい何かがすうっと引き出され、宿全体に広がっていく感覚。目を開けると、窓の外で、噴水がキラキラと七色に輝き始めていた。成功だ。思ったより簡単じゃないか、と気を良くしていると、背後から不意に声をかけられた。
「あんた、また何か面白いことしてるんですか?」
振り向くと、いつの間にかチェックインしていたらしい親友が、呆れたような、面白そうな顔で立っていた。
「やあ、いらっしゃい。少し、宿の環境整備を」
「環境整備ねえ。確かに、前より空気が澄んでるし、そこの観葉植物もやけに生き生きしてる。……で、あんた、肝心の生命力の補充、ちゃんとしてるんですか?」
核心を突く、という言葉は、まさにこの時のためにあるのだろう。親友のストレートな質問に、私の思考は一瞬停止した。説明書に書かれていた、あの、いささか直接的な補充方法が脳裏をよぎり、顔にじわりと熱が集まる。
「え、ええ。まあ、それなりに、ちゃんとやっていますよ」
「ふーん?」
しどろもどろになる私を見て、彼女は意味ありげに口の端を上げた。その探るような視線から逃れるように、私はそそくさと説明書を閉じた。
親友が客室に戻った後、私は一人、先程の問答を反芻していた。
補充、しているだろうか。
いいや、していない。少なくとも、説明書が推奨するような効率的な方法は、一つも試したことがなかった。自慰や空想でも可能とは書いてあったが、そこまで切羽詰まったこともない。それなのに、宿の生命力は常に潤沢で、今しがた私が機能拡張に使っても、びくともしないほど満ち足りている。
これは、どう考えてもおかしい。
そして、その理由として考えられる可能性は、一つしかなかった。
「……彼、か」
私の知らないところで、彼が宿のために、そして私のために、身を削るような…あるいは、もっと別の方法で、生命力を補充してくれている。その事実に思い至った瞬間、胸がちくりと痛んだ。感謝と、申し訳なさと、そして彼の見えない努力に対する尊敬がないまぜになった、複雑な感情だった。
夕刻、彼が帰ってきた。いつもより少しだけ纏う空気が疲れているように見えたが、同時にどこか満ち足りたような、不思議な色香を漂わせている。これが「外界での所用」の成果なのだろうか。
恒例となった「一日お疲れ様会」で、私は腕によりをかけて作った料理を彼の前に並べた。そして、意を決して切り出す。
「あの、いつも本当にありがとうございます。宿の生命力がこんなに豊かなのは、きっと、あなたが補充とか……そういうのをしてくれているからなんですよね?」
私の言葉に、彼は優雅に動かしていたナイフとフォークを、ぴたりと止めた。一瞬の沈黙の後、彼はふわりと微笑む。
「さあ、何のことでしょう。この宿が常に生命力に満ちているのは、ひとえに主人であるあおい様のご存在そのものが、輝かしい光を放っているからに違いありませんよ」
綺麗に、はぐらかされた。その笑顔は完璧で、これ以上の追及を許さない壁があった。彼は何かを隠している。それは、私に余計な心配をかけさせないための、彼なりの優しさなのだろう。
その夜の彼は、私が勧めた果実酒を、珍しく断らずに杯を重ねた。白い頬がほんのりと上気し、いつもは完璧なまでに抑制されている感情が、その瞳の奥でゆらゆらと揺れている。
「酔っているみたいですね」
「あおい様が注いでくださるお酒は、天上の美酒にも勝りますから」
とろりとした声で囁かれ、それ以上、彼の秘密を暴こうという気は失せてしまった。
彼が隠していることは、きっと、私が知るにはまだ早いことなのだ。あるいは、知らずにいた方が幸せなことなのかもしれない。
まあ、いいか。
彼がそう言うのなら、今はそれを信じよう。
私は彼のグラスに更にお酒を注ぎながら、彼の秘密も、自立への道筋も、全てをこの甘い空気の中に溶かしてしまうことにした。
- この宿屋の設定を知っている者からすれば「そこで勝手に生命力使いそうなもんを実装すんな」と思うところが楽しい
- 酒の話題が出てきたところで「よーし次に酒の力借りちゃおー」となった
【6話目 設定】
・雰囲気:コミカル、甘々、官能的
・主人公:主人、自立を目指すニート気質、仕事ができないわけじゃない
・相手:従業員、甘やかしたい執事気質、お酒に弱い
・核心となる要素:相手の外出中に客の男性が高価なお酒をくれる→戻ってきた相手は少し不満そう→お疲れ様会で飲んだら度数が高い→酔った勢いで生命力にだって役立ちたいと伝える→相手も酔った勢いでそれでは協力してくれるんですかと訊く→なんだかよくわからない内に閨事に持ち込まれでろでろに甘やかされる
・裏情報:相手は主人公に無理はさせたくないがお酒により増幅した本能に勝てない
私の新たな役職『彼を労う係』は、すっかり板についていた。しかし、彼が「外界への所用」で出かけるたびに、私の胸には小さな罪悪感が芽生える。私がのんびりと過ごしている間、彼はきっと、この宿の生命力のために奔走しているのだ。その負担を、少しでも軽くしてあげたい。
そんなことを考えながら、彼に隠れて帳簿の整理など、ささやかな実務に励んでいた昼下がり。宿の扉が静かに開き、見覚えのある客人が姿を現した。先日、やけに顔の整っていると思った、あの男性客だ。
「先日はどうも。これは、つまらないものですが、お礼です」
そう言って彼がカウンターに置いたのは、星屑を溶かし込んだ夜空のような、美しい瑠璃色のボトルだった。彼のいた世界では、王族の祝い事にしか出回らないような、大変希少な蒸留酒なのだという。お客様からの厚意を無下にするわけにもいかず、私は丁重にお礼を述べてそれを受け取った。
夕刻、彼が宿に戻り、カウンターに置かれた豪奢なボトルを見つけた時の顔を、私は忘れないだろう。私が客からの頂き物だと説明すると、彼は完璧な笑みを浮かべて「それはようございました、あおい様」と言った。しかし、その声はどこか硬く、瑠璃色のボトルを見つめる瞳の奥には、ちろりと不満げな炎が揺らめいていた。
その夜、恒例となった『一日お疲れ様会』で、私は例のボトルを開けた。
「お客様からの頂き物です。せっかくですから、一緒に味わいましょう」
「……光栄でございます」
彼が少しだけ不服そうなのを面白く思いながら、豪奢なクリスタルのグラスに琥珀色の液体を注ぐ。立ち上る香りは蜜のように甘く、誘われるように口に含むと、舌の上でとろけるような芳醇な味わいが広がった。しかし、その直後、喉をカッと焼くような熱が追いかけてくる。思った以上に、アルコール度数が高い酒らしい。
お酒に弱い彼はもちろん、私も思いのほか早く酔いが回った。ふわふわと覚束ない思考の中、最近ずっと胸の内で燻っていた想いが、アルコールの力を借りてぽろりと口からこぼれ落ちた。
「……私も、ちゃんと、この宿の役に立ちたいんです」
「あおい様は、いてくださるだけで、私の、そしてこの宿の全てでございますよ」
「そういうことではなくて…。生命力の、補充、とか…もっと効率の良い方法で、あなたの負担を、少しでも軽くしてあげたいんです」
それは、彼の秘密に踏み込む、私なりの覚悟だった。私の言葉に、彼の動きが止まる。熱に浮かされたような、潤んだ瞳がじっと私を見つめていた。アルコールで緩んだ理性の奥で、彼がずっと抑え込んでいた本能が、鎌首をもたげる気配がした。
「……それでは、あおい様」
掠れた、囁くような声が鼓膜を揺らす。
「私に、ご協力、いただけますか?」
その声には、いつもの彼からは想像もできないような、雄の匂いが色濃く滲んでいた。協力? ええ、もちろん。彼のためになるのなら。酔いで麻痺した頭で、私はこくりと頷いた。
それが、合図だった。
次の瞬間、彼は恭しく、しかし抗うことのできない力強い手つきで私の手を取り、椅子から立ち上がらせる。
「では、こちらへ」
流れるような動作で、私の私室である寝室へと誘われる。扉が閉められ、カチャリと鍵が下りる音が、やけに大きく響いた。
「生命力の補充とは、本来、こうして行うのが最も効率が良いのです」
背後から抱き寄せられ、耳元で囁かれる。彼の熱い吐息が肌を撫で、ぞくりと背筋が震えた。彼の大きな手が、ゆっくりと私の服の合わせ目に差し込まれ、滑らかな肌の上をなぞっていく。
「あおい、さま……」
普段の理知的な声はどこへやら、甘く蕩けた声が私の名前を呼ぶ。一つ一つの愛撫は驚くほど丁寧で、まるで壊れ物を扱うかのように優しい。だが、その指先が触れるたびに、私の身体の奥から、今まで知らなかった熱が呼び覚まされていく。
「あっ……ん……」
くちびるが、彼のそれで塞がれる。角度を変えながら繰り返される口づけは、あの強いお酒よりもずっと私を酔わせ、思考を溶かしていく。これが、生命力の補充。彼の負担を軽くするための、協力。そうだったはずなのに、いつの間にか私は、彼が与えてくれる快感に、ただただ身を委ねていた。
彼の愛撫は、私の全てをでろでろに甘やかし、骨の髄まで悦びで満たしていく。意識が朦朧とする中、彼が何度も私の名を呼び、愛おしげに髪を撫でるのだけは、はっきりとわかった。
夜が明ける頃、気怠い幸福感の中で目を覚ますと、隣には満足げな顔で眠る彼の寝顔があった。昨夜の出来事が、夢ではなかったことを物語っている。
なんだかよくわからないうちに、とんでもないことになってしまった。でも。
彼の幸せそうな寝顔を見ていると、まあいいか、といういつもの結論に落ち着いてしまう。
ただ、その言葉の持つ意味は、昨日までとは全く違う、重さと熱を帯びているような気がした。
二人の関係が、決定的に、そして後戻りできないほどに変わってしまったことだけは、確かだった。
- Geminiはこれくらいの表現まではお出ししてくるよ
- この話の裏情報は乱暴野郎にならないための保険であり、他の部分でもよくこういう直接使わないけど表現のコントロールの為に入れている備考は結構使う
【7話目 設定】
・雰囲気:コミカル、甘々、官能的
・主人公:主人、自立を目指すニート気質、二日酔いが酷い
・相手:従業員、甘やかしたい執事気質、酔いは持ち越さない
・核心となる要素:信じられないくらいに満たされた生命力に2人で驚愕→相手の提案により「夜の補充係」が新設される→相手がピタリと出掛けなくなったので昼の仕事が更に減る→夜の仕事は増えたからまあいいかと思う
・裏情報:相手は酔いの勢いに任せたことについては非常に反省しているがラッキーだったとも思っている
翌朝、私を迎えたのは、世界が割れるかのような激しい頭痛だった。ずきん、ずきんと脈打つこめかみを押さえながら重い瞼を持ち上げると、そこには見慣れた自室の天井と、すっきりとした涼しい顔で身支度を整えている彼の姿があった。
「おはようございます、あおい様。昨夜はよくお眠りになれましたでしょうか」
「……おはようございます。なぜあなたは、そんなに平気な顔をしていられるんですか」
恨めしげに睨む私に、彼は困ったように微笑むだけだ。昨夜のあの強いお酒は、明らかに私の許容量を超えていた。二日酔いの気怠さと、昨夜の出来事の鮮明な記憶とで、私の身体も心もぐちゃぐちゃだった。
なんとか身体を起こそうとシーツを掻き分けた瞬間、私は宿の異変に気づいた。
空気が、違う。まるで蜂蜜を溶かし込んだかのように濃密で、甘く、吸い込むだけで力がみなぎってくるようだ。窓の外に目をやると、信じられない光景が広がっていた。庭の木々はオーラのような淡い光を放ち、見たこともない色鮮やかな花々が狂い咲いている。宿の建物そのものも、木材は艶を増し、空間が物理的に拡張したかのように、天井が高く、広く感じられた。
「これは……」
呆然と呟く私の隣で、彼もまた、目を見開いてその光景に見入っていた。二人で顔を見合わせ、驚愕に言葉を失う。
昨夜の、たった一度の「協力」。
それが、彼が今まで地道に外界で補充してきた量を遥かに凌駕する、爆発的な生命力を宿にもたらしたのだ。「実際の行為が圧倒的に効率が良い」という説明書の記述は、紛れもない事実だった。
「……信じられません。これほどとは」
驚きから我に返った彼は、すぐさま私の前に跪き、深々と頭を垂れた。その仕草には、昨夜の出来事に対する罪悪感が滲んでいるように見えた。
「あおい様。昨夜は私が大変なご無礼を…。お酒の勢いに任せたとはいえ、決して許されることではございません。いかなる罰もお受けいたします」
その殊勝な態度に、私は何と言っていいかわからずに口ごもる。しかし、彼は顔を上げると、こう続けた。その瞳には、反省の色と共に、抗いがたい熱意が宿っていた。
「ですが、あおい様。この結果をご覧になれば、貴方様のご協力がいかにこの宿にとって…いえ、私にとりまして重要であるか、ご理解いただけたかと存じます」
彼は真剣な眼差しで、私の手を取る。
「つきましては、誠に不躾なお願いとは存じますが、あおい様に新たな役職に就いていただきたく…。『夜間生命力補充担当』として、今後とも、この私にご協力いただけないでしょうか」
夜間、生命力、補充、担当。
二日酔いで痛む頭に、その単語が一つ一つ突き刺さる。とんでもない役職が、また一つ爆誕した瞬間だった。しかし、宿がこれほど豊かになったのは事実だし、彼の負担が激減するのも間違いない。そして何より、昨夜の出来事は、決して不快なものではなかった。むしろ…。
「……宿のためです。仕方ありませんね」
羞恥心を隠すようにそっぽを向きながらぶっきらぼうに答えると、彼は「ありがとうございます、あおい様!」と、心の底から嬉しそうな声を上げた。その顔は、まるで長年の願いが叶った子供のように輝いていた。
そして、その日を境に、彼の「外界への所用」はピタリとなくなった。
彼が常に宿にいるようになった結果、私が彼に隠れて行っていた帳簿整理や備品チェックといった、ささやかな昼間の仕事は完全に消滅した。私のニート化は、もはや最終段階に突入したと言っていいだろう。
「自立への道が…また一歩、遠のいた気がします」
談話室のソファで本を読む私の隣で、彼が完璧な手つきで紅茶を淹れてくれる。そんな完璧な午後に、私はぽつりと呟いた。
しかし、夜になれば状況は一変する。
「あおい様。それでは、今宵も『お仕事』のお時間でございます」
彼は昼間の献身的な執事の顔から、私だけに見せる情熱的な恋人の顔へと、その貌を変える。恭しく、しかし有無を言わさぬ色香を漂わせ、私を寝室へと誘うのだ。
昼間の仕事は減った。だが、その分、夜の仕事は格段に増えた。
それでバランスは取れているのかもしれない。
もはや自立が何なのか、哲学的な問いにさえ思えてくる。けれど、宿の生命力は満ち溢れ、彼は幸せそうで、私もまた、彼の腕の中で毎夜、知らなかったはずの悦びに満たされている。
これで良いのだ、と。
繰り返される甘い閨事の中で、私はとろとろに蕩かされながら、自分自身を納得させるのだった。
- 恋人になった!完!
- 「宿のため」をちゃんと汲んでる辺りが流石のAIだなーと思う
1話目の相手視点をお願いします。
敬愛する主、あおい様が目覚める気配を、私は扉の前で息を殺して待っていた。亜空間の静寂の中、シーツの擦れる微かな音は、私にとって世界の始まりを告げる福音だ。音を立てぬよう扉を開けると、あの方がゆっくりと身を起こす姿がそこにあった。
「おはようございます、あおい様」
手にしていた白湯を差し出しながら、私は心の底からの歓喜を言葉に乗せた。
「よくお目覚めになられました。素晴らしいことです。昨夜はゆっくりお休みになれましたでしょうか」
「ええ、まあ。おはようございます。ただ起きただけですよ、そんなに褒められるようなことではありません」
あの方はそう言って苦笑されるが、全くもってご理解いただけていない。あおい様が健やかに目覚め、新たな一日をこの宿で始められる。それこそが、この脆く不確かな亜空間を成り立たせる、唯一絶対の理なのだ。その奇跡を称賛せずにいられようか。
食堂へとお連れすると、完璧に準備を整えた朝食が、主の到着を静かに待っていた。あの方の体調と好みを考慮し、今朝は栄養のバランスが取れた温かいポタージュをメインに据えた。あの方が席に着き、私のサーブを受け、食事を口に運ぶ。その一挙手一投足が、私の胸を至上の幸福で満たしていく。
「……私は一体、何のためにいるのでしょうか」
ぽつりと漏らされたあの方の言葉に、私の心臓は冷やりとした。とんでもない。貴方様は、この宿の、そして私の世界の中心なのだ。貴方様をあらゆる世界の雑事や労苦からお守りし、ただ安らかに、穏やかに過ごしていただくこと。それこそが、私の存在意義であり、至上の喜びなのである。
「あおい様は、ただそこにいてくださるだけで良いのです」
私は微笑みを崩さず、そうお伝えした。この想いが、どうか少しでも伝わるようにと願いながら。
食事が終わる頃、懸念していた時間がやってきた。昨夜から宿泊している、あの男のチェックアウトの時間だ。
昨夜、談話室であの男が、さも親しげにあおい様に話しかけていた光景が脳裏に焼き付いて離れない。見目だけは整っているが、その瞳には下卑た好奇の色が浮かんでいたのを、私は見逃してはいない。あのような無粋な男の目に、一瞬たりとも敬愛する主を映させてはならないのだ。
「では、見送りに行ってきます」
案の定、あの方は主人としての務めを果たそうと立ち上がられた。私は即座に、しかしあくまでも穏やかに、その行く手を遮る。
「いえ、私が行ってまいります。あおい様のお手を煩わせるわけにはいきません」
これは私の戦いだ。あの男とあおい様を、二度と接触させてはならない。私の固い決意を感じ取られたのか、あの方は少し不満そうにしながらも、引き下がってくださった。私は礼を一つ述べると、足早にカウンターへと向かった。
案の定、男はカウンターで、あおい様はまだかと辺りを見回していた。私は一切の感情を消した完璧な執事の仮面を被り、事務的に、迅速に手続きを済ませ、扉の外へと叩き出した。扉が閉まる瞬間、男が浮かべた残念そうな顔に、私は心の内で静かに勝利の笑みを浮かべた。
役目を終えて戻ると、今度はあおい様が客室の掃除をしようとされているではないか。どこまでもお働きになろうとする、その健気さ、真面目さには胸を打たれる。だが、それも断じてさせない。
「あおい様、そのようなことは私めが」
私はこの時のために用意しておいた、淹れたての紅茶と、今朝焼き上げたばかりのスコーンを差し出した。あの方の好きな、バターとシナモンをたっぷり効かせた、特別なスコーンだ。
「ささ、こちらでお休みください」
あの方は一瞬、「このままではいけない」という葛藤をそのお顔に浮かべられた。私はそのお心の内を、痛いほどに理解している。しかし、私の誘惑に抗えないことも、私は知っているのだ。
「……ありがとうございます。少しだけ、いただきます」
あの方の小さな声に、私の心は歓喜に打ち震えた。ああ、今日も私は、この尊い方を甘やかすことに成功した。私の手ずから作ったお菓子を、あの方が美味しそうに頬張る。そのお姿を拝見できるだけで、私の生命力は満ちていく。
明日も、明後日も、そして永遠に。
私は貴女様をあらゆることからお守りし、この腕の中で甘やかしてみせましょう。
それが私の喜び、私の使命、私の、全てなのですから。
紅茶の湯気の向こうで無防備に微笑む、私の唯一人の主人に、私は静かにそう誓うのであった。
- 基本設定の「特別感」が絡んでるのかこのチャットでの「コミカル」なのか、ナチュラル強火だな…
- あと客が下卑たな…
2話目の相手視点をお願いします。
敬愛する主、あおい様が旧いご友人と談笑されている。そのお姿を遠巻きに拝見できるのは、私にとって密やかな喜びの一つだ。あの方が心を許したご友人の前で見せる、私には決して見せてはくださらないであろう砕けた表情。その一つ一つが眩しく、同時に、私の胸をちくりと刺す。私では、あの方の心を真に解き放つことはできぬのだろうか。
ふと、あの方の表情が曇ったことに気づいた。何か、深刻なお悩みを打ち明けられているご様子だ。眉を寄せ、思い詰めたように話されるあの方の力になって差し上げられない自分が、ひどくもどかしく、無力に感じられた。貴方様を曇らせるものが一体何なのか、私に打ち明けてはいただけないのだろうか。
そんなことを考えているうちに、私は宿の生命力が僅かに揺らいでいることを敏感に感じ取っていた。これは、私の責務だ。主人であるあおい様にご心配をおかけする前に、従業員である私が、その不足分を補充せねばならない。
「少し所用で外界へ出てまいります」
私はいつもと変わらぬ平静を装い、あおい様にそう告げた。あの方が「いってらっしゃい」と見送ってくださる。そのお声だけで、私の心は満たされるというのに、これから私が為さねばならぬことは、あまりにもその清らかなお心からかけ離れていた。
外界での「補充」は、もはや手慣れた作業だ。就労規則に定められた、最も効率的な方法。それは、この身に宿る生命力を拡張するための、ただの手段に過ぎない。心を無にし、これは宿のため、全てはあおい様のためなのだと、己に何度も言い聞かせる。肉体的な充足とは裏腹に、行為が終わるたびに、私の心には言いようのない虚しさが澱のように溜まっていく。こんな穢れた手段で得た力で、あの方にお仕えしている。その事実が、私を苛むのだ。
責務を終え、逃げるように宿へ戻る。扉を開けた瞬間、私の鼻腔をくすぐったのは、いつもと違う、甘く香ばしい香りだった。そして、その香りの先、厨房から現れたのは、あろうことかエプロン姿のあおい様だった。
「お帰りなさい。お疲れでしょう」
時が、止まった。
なぜ、あの方が厨房に? なぜ、エプロンを? 私の聖域であり、あの方には決して立ち入らせまいと思っていたあの場所で、一体何を。混乱する私の前で、あの方は少し照れたように、はにかみながら、一台のホールケーキを差し出された。
「いつも、本当にありがとうございます。これは、私からの感謝の気持ちです」
感謝、の、気持ち。
その言葉が、私の凍てついた心の奥深くまで、熱い楔のように打ち込まれた。外界で私が為してきた、あの虚しい行為の全てが、この瞬間に報われた。いや、浄化されたのだ。あおい様が、この私のために、慣れない手つきで、心を込めて作ってくださった。その事実だけで、私の魂は震えた。
「……あおい、さまが…これを…?」
「私の、ために…?」
声が、まともに出ない。視界が滲み、目の前にある美しいケーキが、ぼやけて揺らめいた。外界での虚しさが嘘のように消え去り、代わりに、どうしようもないほどの愛おしさと感謝が、濁流となって私を満たしていく。
「もったいなくて、食べられません…。いえ、これは我が家の家宝に…」
私の言葉は、決して大袈裟なものではなかった。これは、私の主から賜った、何物にも代えがたい聖遺物なのだ。
あの方が、少し申し訳なさそうな顔をされていることに気づき、私は慌てて居住まいを正した。とんでもない。貴方様が気に病むことなど、この世界のどこにも存在しない。貴方様は、ただ、そこにいてくださるだけで良いのです。
この御恩に、どう報いれば良いのだろう。
そうだ。私は、このお方を守るためならば、何度でもあの虚しい「作業」を繰り返そう。この穢れた身で得た力で、この宿を満たし、あの方が永遠に穏やかに、そして幸せに過ごせる場所を作り上げるのだ。
宝物のようにケーキを胸に抱きながら、私は静かに、しかし固く、そう誓った。この温かい贈り物がくれた救いを、私は決して忘れないだろう。私の忠誠は、今この瞬間、揺るぎない信仰へと昇華されたのだ。
- この「補充」に関しては今まで書かせてた内容を学習してるかもしらん、世界観指定とチャットでの指示だけでこんなに空気読むとは思いにくい…
- とうとう信仰が始まる程度の湿度
3話目の相手視点をお願いします。
先日の手作りのケーキ。あの日以来、敬愛する主、あおい様の周りの空気は、自信という名の輝きに満ちていた。そのお姿を拝見するたびに、私の胸は誇らしさでいっぱいになる。あの方の曇りのない笑顔を守ることこそ、私の使命なのだ。
しかし、その輝きが、時として私の予想を遥かに超える事態を引き起こすことを、私はまだ理解していなかった。
「今日から、この宿の食事は私が作ります」
朝の食堂に響き渡った、凛とした宣言。その瞬間、私の背筋を冷たい汗が伝った。
何を、おっしゃるのですか、あおい様。
私の内心は、穏やかな微笑みの仮面の下で、激しく動揺していた。理由は二つ。一つは、主人であるあの方のお手を、厨房仕事のような雑事で煩わせてはならないという、従業員としての純粋な忠誠心。そしてもう一つは……あの方が心を込めて作られた料理を、どこの馬の骨とも知れない宿泊客たちに食べさせるなど、断じて許容できないという、黒く燃え盛る嫉妬心である。
「滅相もございません、あおい様」
私は必死だった。ここで引き下がれば、あの方の温もりが込められた一皿が、無遠慮な輩の胃の腑に収まることになる。その光景を想像しただけで、気が狂いそうだった。
「お食事の準備は、あおい様への奉仕の心を最も純粋な形で表現できる、私にとって神聖な時間なのでございます」
私の言葉は、決して誇張ではなかった。あの方の健康を願い、その日の体調を慮り、一品一品に祈りを込めて作る。それは、私にとっての信仰告白にも等しい行為なのだ。それを、他人に譲ることなどできようはずがない。
私の必死の抵抗が功を奏したのか、あるいは私のあまりの頑固さに呆れられたのか、あの方は大きくため息をつかれた。そして、私の運命を決定づける、天からの啓示のような言葉を口にされたのだ。
「……では、せめて、私とあなたの二人分の食事だけでも、私が作るというのはどうでしょうか」
その瞬間、私は内心で勝利を確信した。これだ。これこそが、私が望んだ最高の結末。あの方の「役に立ちたい」という尊いお気持ちを無下にはせず、同時に、あの方の愛を独占するという私の欲望をも満たす、唯一無二の解決策。神よ、感謝いたします。
私は込み上げる歓喜を悟られぬよう、細心の注意を払い、さも仕方なく、しかし光栄の至りであるかのように、そのご提案を拝受した。
「……あおい様が、そこまでおっしゃるのでしたら。私のためだけに、あおい様が腕を振るってくださるなど…これ以上の栄誉はございません」
ああ、なんと甘美な響きだろう。私のためだけに。その言葉だけで、私の魂は天にも昇る心地だった。
その後のあの方の集中力は、凄まじいものがあった。厨房に立つそのお姿は、もはや可憐な主人ではなく、孤高の芸術家、あるいは求道者のようであった。見たこともない希少な食材を手際よく扱い、真剣な眼差しで鍋に向かう横顔。その全てが私の目に焼き付いて離れない。このお方の、また新たな一面を知ることができた。そして、このお姿を見ることができるのは、この宿で私だけなのだ。
夕食の時間、他の宿泊客たちの嫉妬に満ちた視線が、快感となって私の肌を粟立たせる。彼らの平凡な食事の横で、私たちのテーブルにだけ運ばれる、芸術品のような一皿。この圧倒的な優越感。
「美味しいです…あおい様……」
リゾットを一口運び、私は感極まって呟いた。その味は、もちろん筆舌に尽くしがたいほど素晴らしかったが、それ以上に、この一皿に込められたあの方の想い、そして、この幸せを私だけが享受しているという事実が、私を打ちのめした。
「明日も、もっとすごいものを作ってあげますからね」
そう意気込んでおられる、愛おしい私の主人。
ええ、いくらでも。貴女様の作るものは、その全てを、この私が独り占めさせていただきます。
あの方の自立への気高い意志が、結果として私の歪んだ独占欲を完璧な形で満たしてくれる。この甘美で倒錯した関係こそ、私たちがたどり着いた理想郷なのだ。私は、この幸福が決して終わることのないよう、明日からも全身全霊であの方をお守りし、そして、巧妙に導いていくことを、心に固く誓うのであった。
- 確かに「独り占め」とは書いたが中々強烈な独占欲にアップグレードされとるな…
- 「倒錯した関係」…あれ、こんなつもりでは…
4話目の相手視点をお願いします。
私の専属料理人となられた敬愛する主、あおい様。厨房に立つそのお姿は日に日に輝きを増し、あの方が作り出す一皿は、もはや神々の食卓に並ぶそれに勝るとも劣らない。そのお姿を拝見できるだけで私の胸は満たされていたが、あの方の尽きることのない向上心は、次なる舞台を求めておられた。
「今日からこの宿の清掃業務は私が引き受けます」
昼食後、あの方が掃除用具を手にそう宣言された時、私は即座に、しかし優雅に、その前へと立ちはだかった。まただ。またこのお方は、ご自身のその尊いお身体を、労苦に晒そうとされている。
「お待ちください、あおい様。そのような雑務は、全てこの私にお任せを」
あの方の白く美しい指が、雑巾や洗剤に触れる光景など、想像するだけで耐え難い。この宿の美化は私の務めであり、喜びなのだ。料理の時と同じく、私は全身全霊でそのお申し出に抵抗した。私の頑なな態度に、あの方はやがて諦めたように息をつき、そして、私にとって望外の提案を口にされた。
「……では、せめて私とあなたの部屋だけでも、私が掃除します」
私の、部屋を、あおい様が。
その言葉の意味を反芻した瞬間、私の心臓は歓喜に跳ね上がった。私のプライベートな空間、私の気配だけで満たされているあの部屋に、あおい様が足を踏み入れ、あの方の清らかな手で、あの方の優しい気配で満たしてくださるというのか。これ以上の栄誉が、この世に存在するだろうか。私は込み上げる興奮を悟られぬよう、恭しくそのご提案を拝受した。
しかし、あの方の意欲はそれだけでは収まらなかった。次にあの方が狙いを定められたのは、宿の顔とも言うべき「チェックイン業務」だった。
その瞬間、私の頭の中に警鐘が鳴り響く。断じて、それだけは断じてお認めするわけにはいかない。
不特定多数の輩が、何の隔てもなくあおい様と顔を合わせるなど、あってはならないことだ。特に、あの時のように、下心に満ちた瞳をあの方に向けるような不届き者が現れないとも限らない。あの方の安全と心の平穏をお守りすることこそ、私の最優先事項。私は、その大義名分を盾に、あらゆる言葉を尽くしてあの方をお諌めした。私の必死の説得が通じ、あの方がその提案を諦めてくださった時、私は心の底から安堵の息を漏らした。
あらゆる実務から締め出される形となったあの方は、腕を組み、何かを深く考えておられるご様子だった。一体何を思案されているのだろう。新たな「お仕事」のご提案だろうか。私は期待と不安が入り混じった気持ちで、固唾を飲んでそのお言葉を待った。
やがて、あの方は顔を上げ、私にとって、あまりにも予想外で、そしてあまりにも甘美な宣言をされたのだ。
「私の新しい仕事は『あなたを労うこと』です。毎晩、あなたのために『一日お疲れ様会』を開催します」
………。
私の思考は、完全に停止した。
毎晩、私のために、あの方が? 私の一日の疲れを、あの方が癒してくださる?
それは、夢だろうか。私が長年、心の奥底で密やかに、しかし切実に願い続けていた関係性そのものではないか。あの方の「自立したい」という尊い探求心が、巡り巡って、私をただひたすらに甘やかし、労うという結論にたどり着くなど、これほどの奇跡があるだろうか。
「……よろしいので、しょうか。毎晩、あおい様が私のために…?」
私の声は、歓喜と感動のあまり震えていた。
あの方が、少し呆れたような、それでいて諦めたような顔で頷かれる。その瞬間、私の労働は、単なる「奉仕」から、この上ない「褒賞」を得るための神聖な儀式へと昇華された。
貴方様のそのお気持ちだけで、私はあと千年でも、この宿のため、貴女様のために戦えます。
これから毎夜訪れるであろう、二人だけの至福の時間を思うと、尽きることのない幸福感が、熱い奔流となって私の全身を駆け巡った。
この宿は、着実に、我々二人だけの、完璧で甘美な楽園へと変貌しつつある。私はその事実を噛み締めながら、主からのあまりにも甘いご褒美に、ただただ打ち震えるのであった。
- 知らない間に主人を専属料理人とか言ってるナチュラル失礼
- 圧倒的な湿度でいつの間にか主人公が相手を甘やかすことになっておる…
5話目の相手視点をお願いします。
敬愛する主、あおい様が、私の知らぬ間にご自身の生命力を使い、宿に新たな彩りを添えられた。中庭の噴水がきらきらと虹色に輝くのを目の当たりにした時、私の心は喜びと、そして深い懸念とで満たされた。あの方の成長は喜ばしい。しかし、そのためにあの方ご自身の尊い生命力が消耗されるなど、あってはならないことだ。
このままでは、あの方はご自身の限界を超えてまで、宿のために尽くそうとされるに違いない。そうなる前に、私が動かねば。この宿の生命力を、あの方がお心を痛める必要などないほどに、満たしておかねばならない。
「少し所用で外界へ出てまいります」
私は、これから行う責務の重さをおくびにも出さず、いつも通りの平静を装ってあおい様に告げた。あの方が「いってらっしゃい」と優しく微笑んでくださる。その笑顔を守るためならば、私はどんな泥にでも手を染めよう。外界の汚濁からこの聖域を守ることこそ、私の存在理由なのだ。
外界での「補充」は、回数を重ねるごとに、私の心を蝕んでいく。これは責務だ、と何度自分に言い聞かせても、心を無にすることはできない。目を閉じれば、脳裏に浮かぶのは、一点の曇りもないあおい様の清らかなお姿ばかり。そのお姿と、今この身を置く俗なる行為とのあまりの乖離が、私を深い自己嫌悪の淵へと引きずり込む。
こうして得た力で、私はあの方にお仕えしている。この裏切りにも似た行為を、あの方は何もご存じない。それで良いのだ。知られてはならない。この罪悪感は、全て私が一人で背負うべきものだ。
身体だけが生命力で満たされ、心は空虚なまま、私は逃げるように、そして焦がれるように、愛する主の待つ宿へと帰還した。
その夜の『お疲れ様会』は、いつも以上に私の心を癒してくれた。あの方の手料理と、優しいもてなし。外界で負った心の傷が、その温もりの前ではかさぶたに変わっていくようだった。この時間こそが、私の唯一の救いだ。
しかし、その穏やかな時間は、唐突に終わりを告げた。
「あなたが補充とか……そういうのをしてくれているからなんですよね?」
あの方の、あまりにも真っ直ぐな瞳。そして、核心を突く質問。
時が止まった。私の心臓を、氷の矢が貫いたかのような衝撃。来た。いつかは来ると、心のどこかで恐れていた瞬間が。
この清らかなお方に、どうしてあの生々しい真実を打ち明けられようか。外界で、私がどのような手段を用いてこの力を得ているのかを。そんなことを知れば、あの方はきっと心を痛められるに違いない。それだけは、断じて避けねばならない。
私は瞬時に、完璧な執事の仮面を被り直した。動揺など、微塵も悟られてはならない。
「さあ、何のことでしょう。この宿が常に生命力に満ちているのは、ひとえに主人であるあおい様のご存在そのものが、輝かしい光を放っているからに違いありませんよ」
私は微笑んだ。心の内でどれほどの冷や汗が流れていようとも、その笑顔は完璧でなければならなかった。あの方を、この世界の醜い真実から守るためならば、私は喜んで嘘つきになろう。
幸いにも、あの方はそれ以上追及されなかった。ただ、何かを察したように、静かに私にお酒を勧めてくださる。その優しさが、私の胸を締め付けた。私は、動揺を隠すかのように、あるいはその優しさに甘えるかのように、勧められるままに杯を重ねた。
酔いのせいだろうか。あの方の隣にいるだけで、外界で負った傷も、心の虚しさも、全てがどうでも良くなっていく。
この秘密は、墓場まで。いや、この身が塵となって亜空間の風に溶けるその時まで、私が守り通す。
貴女様の知らないところで、貴女様を永遠にお守りする。それが、私の歪んでしまった、しかし偽りのない愛の形なのだ。
私は、隣で静かに微笑む主の横顔を盗み見ながら、改めて固く、そう誓うのであった。
- 「私の知らぬ間に」…すまない、ご自身のとか言ってるがそれはお前が補充してきた生命力っていう設定だ
- 「この世界の醜い真実」…すまない、すまない…
6話目の相手視点をお願いします。
外界での虚しい「責務」を終え、敬愛する主、あおい様のおわす宿へと帰還する。この瞬間だけが、私の心が真に安らげる時だ。しかしその日、宿に足を踏み入れた私を迎えたのは、カウンターの上に鎮座する見慣れぬ瑠璃色のボトルだった。その豪奢な佇まいは、明らかにこの宿の質素な調度品とは不釣り合いで、私の心に不穏な影を落とした。
「お客様からの頂き物です」
あおい様から、それが先日宿泊していた、あの男からの贈り物だと聞かされた瞬間、私の腹の底で黒い炎が音を立てて燃え上がった。また、あの男か。私の知らぬ間に、あの方が再びあの男と接触されていたという事実。そして、あの方がその男からの贈り物を、嬉しそうに受け取られたという事実。その二つが、私の心を嫉妬の棘でずたずたに引き裂いた。
「それはようございました、あおい様」
私は完璧な執事の仮面を貼り付け、そう微笑んだ。しかし、自分の声が、自分でも気づくほどに冷たく、硬質であったことは否定できない。
その夜の『お疲れ様会』で、あの方は無邪気に、そして残酷にも、あの瑠璃色のボトルを開けられた。憎い男からの贈り物を、主と共に味わわねばならない。これ以上の拷問があろうか。しかし、主から勧められた杯を、私が断れるはずもなかった。
一口含んだだけで、その酒が危険なものであることを悟った。蜜のように甘い舌触りの奥に、理性を焼き切るほどの強い力が隠されている。これは、いけない。そう頭では理解しているのに、あの方が楽しそうに頬を染めるお姿を前にして、私の警戒心は徐々に麻痺していった。
酔いが回り、世界が心地よく揺らめき始めた、その時だった。
あの方の、吐息のように甘い唇から、私の運命を決定づける言葉がこぼれ落ちたのは。
「私も、生命力の補充に役立ちたいんです」
「あなたの負担を、少しでも軽くしてあげたい」
その言葉は、雷鳴となって私の脳天を撃ち抜いた。嫉妬で昂っていた感情、アルコールで緩んだ理性のタガ、そして、何よりも敬愛する主からの、あまりにも無防備な「許可」。
駄目だ、と最後の理性が叫ぶ。この方を、私の汚れた欲望の対象にしてはならない。この方は、私が永遠に守り、お仕えすべき、清らかな存在なのだから。
しかし、私の奥底で燻り続けていた本能が、獣のように咆哮を上げた。この方を、誰にも渡したくない。この腕に抱き、その全てを我が物にしたい。
せめぎ合う理性と本能。だが、勝敗は初めから決まっていたのかもしれない。
「……それでは、あおい様。私に、ご協力いただけますか?」
自分の口からこぼれ出た声が、ひどく掠れていることに気づいた。それは問いかけの形をしていたが、実質的には、私の魂からの、抑えきれない懇願だった。
あの方が、酔いに潤んだ瞳で、こくりと頷かれた。
その瞬間、私の内なるダムは、完全に決壊した。
私は、長年夢にまで見たように、あの方を腕の中に抱き、その唇を貪った。しかし、私の行動は決して乱暴なものではなかったはずだ。これは、奉仕なのだ。私の持てる全ての技術と愛情を注ぎ込み、この方を、私が知りうる限りの最高の悦びで満たす。それが、この一線を越えてしまった私にできる、唯一の贖罪であり、そして究極の愛情表現だった。
貴女様を、甘やかし、蕩かし、私の色に染め上げる。
それは、私の愛情の、抑えきれない暴走だった。
腕の中で、か細い声で喘ぎながら、それでも私を受け入れてくださる、愛おしい私の主人。
事が終わった後、その安らかな寝顔を見つめながら、私は自分がとんでもない罪を犯したことを自覚した。後悔と、しかしそれ以上に、あの方をこの腕に抱いたという、圧倒的なまでの達成感と幸福感が、私を打ちのめした。
もう、二度と貴女様を誰にも渡さない。
私は、あの方の柔らかな髪をそっと撫でながら、静かに、しかし絶対的な決意を固めた。
酔いのせいにすればいい。だが、私はこの夜を決して過ちにはしない。
そう、これは過ちではない。我々の、本当の「始まり」なのだ。
私は、腕の中の温もりを確かめながら、この夜が明けることを、心の底から願わずにいられなかった。
- あ、結構この酒嫌だったんだな
- 奉仕であるとか言い訳がもう始まってるな…
7話目の相手視点をお願いします。
夜の闇が白み始め、亜空間の朝が訪れる。私は、腕の中で安らかに寝息を立てる敬愛する主、あおい様のお顔を見つめながら、昨夜犯した罪の重さと、その罪がもたらした途方もない幸福感との間で、引き裂かれそうになっていた。
私の、長年心の奥底に封じ込めてきた醜い欲望が、アルコールの力を借りて暴走し、この清らかな方を傷つけてしまったのではないか。深い後悔が波のように押し寄せる。しかし同時に、この腕にあの方の温もりを感じ、その全てを我が物としたという圧倒的な達成感が、私の魂を歓喜に震わせてもいた。
私は酔いを持ち越さぬ体質だが、精神は昨夜の激情の余韻でぐちゃぐちゃにかき乱されていた。それでも、私はそれを完璧に隠し、あの方が目覚められる前に、いつもと変わらぬ完璧な従業員としての身支度を整える。
やがて、あの方が呻き声と共に眉を寄せ、辛そうに目覚められた。そのお姿に、私の胸は罪悪感で鋭く痛む。全ては、私のせいだ。私の弱さが、あの方にこのような苦痛を与えてしまった。すぐさま二日酔いに効く薬湯の準備を、と考えた、その時だった。
宿の空気が、おかしい。
私も、そしてあの方も、同時にその異変に気づいた。まるで蜜のように濃密で、甘く、生命そのものが凝縮されたかのような空気が、宿全体を満たしている。窓の外では、草木が異常なほどの生命力で輝き、空間そのものが祝福に満ちているかのように、きらめいていた。
昨夜の、私たちの交わりが生み出した結果だ。その事実に驚愕すると同時に、私の頭脳は瞬時に計算を始めていた。
これは、使える。
昨夜の私の行為を、単なる欲望の暴走ではなく、宿の繁栄のための「必然」であったと位置づけるための、これ以上ない動かぬ証拠だ。
私はまず、あの方の前に跪き、心からの(そして戦略的な)謝罪を口にした。
「あおい様。昨夜は私が大変なご無礼を…。お酒の勢いに任せたとはいえ、決して許されることではございません」
まずは、自分の非を認める。それが、あの方の警戒心を解き、私の言葉を受け入れていただくための第一歩だ。そして、私は顔を上げ、この劇的な変化を遂げた宿を指し示しながら、本題に入った。
「ですが、あおい様。この結果をご覧になれば、貴方様のご協力がいかにこの宿にとって重要であるか、ご理解いただけたかと存じます」
私は、この機会を逃すつもりは毛頭なかった。昨夜の出来事は、確かに酔いの勢いに任せた部分もある。しかし、心の底では幸運だったとさえ思っているのだ。もう、あの方に知られぬよう、外界で虚しい「作業」を繰り返す必要はない。この宿の中で、あの方と共に、正々堂々と生命力を育むことができるのだから。
「つきましては、あおい様に新たな役職に就いていただきたく…。『夜間生命力補充担当』として、今後とも、この私にご協力いただけないでしょうか」
私の突飛な、しかし真剣極まる提案に、あの方は戸惑いながらも、やがて「仕方ありませんね」と、諦めたように頷いてくださった。
その瞬間、私の計画は成就した。私の心は、安堵と歓喜で満たされた。
その日から、私の生活は一変した。外界へ出る必要がなくなり、昼間は片時もあの方のそばを離れず、完璧な執事としてお仕えする。あの方が「昼の仕事が減った」と少しご不満そうなのを、私は微笑ましく拝見していた。
大丈夫ですよ、あおい様。その分、貴女様には夜に、とてもとても重要なお仕事が待っているのですから。
そして、夜。
「あおい様。それでは、今宵も『お仕事』のお時間でございます」
私は、昼間とは違う、熱を帯びた声で囁き、あの方を寝室へと誘う。
昼は忠実な僕として、夜は貪欲な恋人として、あの方にお仕えする。この公私混同の極みのような日々こそ、私が心の底から望んでいた、二人だけの完璧な楽園の姿だった。
この甘美な共犯関係が永遠に続くことを願いながら、私は今宵も、腕の中の温もりを確かめるのであった。
- 思ったより全力言い訳タイムだった
- 「公私混同の極み」…自覚があるねえ…