【夢小説】【一部R指定】後ろの席の地味な男子が実は美形な裏番長っていう話
(公開日:)
使用:Gemini2.5Pro、Gemに基本条件を入れている
【設定】
・世界観:学園もの
・主人公:転校生(高校3年の春)、内向的
・相手:同級生、眼鏡と前髪で顔を隠す地味な男だが、実は非常に美形で裏番長、着痩せしたように見えるが筋肉がある
【1話目 あらすじ】
主人公は3年になってからの転校に不安を抱いていた。しかし初日、後ろの席の相手が落としたペンを拾ったことで、少しずつ話せるようになったことが嬉しい。あまり多くを話す人ではなかったが、自分も同じような性質だったので心地よい距離感だった。不良グループがいるのは怖かったが、それを相手に相談したところ、数日して不良グループは大人しくなった。それ以外にも、一部の不良グループは相手を見るだけで道を譲っているような気がしたが、相手の真面目な態度と控えめな笑顔が見えて、主人公の疑問は霧散した。
【裏情報】
・相手は主人公に一目惚れして絶対に巻き込まないと決めている
・相手が裏番長であることは一部の不良と表の番長のみが知っている
・相手は理性も分別もあるが目的のためには手段を選ばないところがある
・相手は本当は主人公に対して性欲があるが、理性で制御している
- 相手に露骨な属性を盛っていく作戦
- 番長が何なのかを知らんし裏番長が何なのかもわからん
- ムッツリっぽくしたかった
桜の花びらがひらひらと舞い散る春の日、あおいは新しい制服に身を包み、見慣れない校門をくぐった。高校三年という、クラスの人間関係も固まりきった時期の転校は、ただでさえ内向的なあおいの心を重くしていた。新しい教室の扉を開ける指先は、微かに震えている。
担任に紹介され、クラスメイトたちの値踏みするような視線に射抜かれながら、あおいは指定された席へと向かった。窓際の後ろから二番目の席。ほっと息をつく間もなく、授業開始のチャイムが鳴った。緊張で強張った肩を意識しながら教科書を開いたその時、背後で何かが床に落ちる小さな音がした。
振り返ると、一番後ろの席の男子生徒が、屈んで何かを探している。どうやらペンを落としたらしい。あおいは咄嗟に自分の足元に転がってきた黒いボールペンを拾い上げ、彼に差し出した。
「…ありがとう」
掠れた、小さな声だった。前髪が長くて、眼鏡の奥の表情はよく見えない。けれど、その声は不思議とあおいの心に馴染んだ。それがきっかけとなり、あおいは少しずつ後ろの席の彼と話すようになった。彼はあまり多くを語るタイプではなかったが、それがかえってあおいには心地よかった。自分もまた、言葉を多く交わすのが得意ではないからだ。休み時間、時折交わす短い会話や、ふとした瞬間に目が合うこと。それだけで、転校初日の不安は薄紙を剥ぐように少しずつ和らいでいくのを感じていた。
しかし、新しい学校生活に慣れ始めた矢先、あおいは別の不安に直面することになる。クラスの一角に陣取る、明らかに雰囲気の違う生徒たちのグループ。彼らは大声で騒ぎ、時折、他の生徒に威圧的な態度を取っていた。その存在は、教室の空気を重くし、あおいの心を再び曇らせた。
ある日の放課後、意を決したあおいは、後ろの席の彼にその不安を打ち明けた。彼は黙ってあおいの話を聞いていた。長い前髪のせいで表情は窺えなかったが、その静かな佇まいが、不思議とあおいを安心させた。彼が何か具体的な言葉を返したわけではなかった。ただ、静かに頷いただけだったように思う。
それから数日後のことだ。あれほど騒がしかった不良グループが、目に見えて大人しくなったのだ。教室での大声はなくなり、威圧的な態度も影を潜めた。まるで嵐が過ぎ去ったかのような静けさに、あおいは首を傾げた。
それだけではない。廊下で不良グループの何人かとすれ違った時、彼らが後ろの席の彼を一瞥するなり、まるで道を譲るかのように壁際に避けたのを目にした。その時の彼の横顔は、いつもと変わらず穏やかで、控えめな笑みさえ浮かべているように見えた。その真面目そうな態度と、時折見せる優しい笑顔。それらがあおいの胸に浮かんだ小さな疑問の欠片を、春霞のように曖昧に溶かしていった。
彼が落としたペンを拾ったあの日から、世界は少しだけ色を変えたように思う。まだ厚い雲に覆われている部分は多いけれど、確かに、柔らかな光が差し込んでいるのを感じていた。今はただ、この心地よい距離感が続くことを願うばかりだった。彼の隣で、静かに流れるこの時間を、大切にしたい。そう、あおいは心の中で静かに思った。
- 大変良い感じに順調に進んでいる!
- しかし正直高校の転校がどんなものなのかよくわかっていない
【2話目 あらすじ】
相手は稀に授業に出ないこともあったが、何か事情があるのだろうと思い主人公が言及することはなかった。夏になり水泳授業を控え、気が重くなった主人公がそれを素直に相手に伝えると、相手は水泳には付き合うと言う。そして水泳の当日、主人公が見たのは相手の逞しい体と、眼鏡を取ったあまりにも美しい顔だった。クラスの男女問わず見惚れ、主人公も思わず意識してしまう。しかし相手の視線は主人公だけを追い、主人公の居心地をますます悪くさせた。その日の放課後、また水泳には付き合うという相手に理由を訊ねると、他の奴が君を見ているからだ、と言う。言葉の意味を考えあぐねるが、あまり出たがらない体育に参加するのは良いことだと思い、主人公の疑問は霧散した。
季節は移ろい、初夏の日差しが教室に差し込むようになった。後ろの席の彼は、時折、ふらりと授業に出ないことがあった。理由を尋ねることは、あおいには憚られた。彼には彼の事情があるのだろう。そう思うだけで、特に気にも留めなかった。ただ、彼のいない教室は、いつもより少しだけ静かで、窓から吹き込む風がやけに大きく感じられた。
やがて、体育の授業で水泳が始まるという告知があった。内向的なあおいにとって、それは新たな悩みの種だった。肌を晒すことへの抵抗感、そして、決して得意とは言えない泳ぎ。その憂鬱な気持ちを、ぽつりと彼に漏らしたのは、ある日の放課後だった。彼は黙ってあおいの話を聞いていたが、やがて、いつもより少しだけはっきりとした声で、「じゃあ、俺も付き合う」と言った。その言葉の真意は測りかねたが、彼も水泳があまり好きではないのかもしれない、とあおいは勝手に解釈した。
そして、水泳の授業当日。更衣室で重い足取りで水着に着替えたあおいがプールサイドへ向かうと、先に着替えて準備運動をしている生徒たちの輪の中に、見慣れない後ろ姿を見つけた。すらりとしているように見えていた彼の肩幅は存外に広く、Tシャツに隠されていた腕や背中には、しなやかな筋肉がついていた。まるで、今まで見ていた彼が幻だったかのように。
彼が不意にこちらを振り向いた瞬間、あおいは息を呑んだ。いつも前髪と眼鏡で隠されていた彼の素顔は、まるで磨き上げられた宝石のように美しかった。長い睫毛に縁取られた瞳は涼やかで、鼻筋はすっと通り、薄い唇が意志の強さを示している。クラスの男女問わず、誰もがその変貌に目を奪われ、プールサイドが一瞬、水を打ったように静まり返った。あおいもまた、その一人だった。心臓が、不自然なほど大きく脈打つのを感じた。
しかし、そんな喧騒をよそに、彼の視線はまっすぐにあおいだけを捉えていた。まるで、他の誰も存在しないかのように。その強い眼差しは、あおいの肌をちりちりと焦がすようで、居心地の悪さを増幅させた。水泳の授業中も、彼の視線は執拗にあおいを追いかけ、それは時として、他の生徒からの好奇の視線よりも強く感じられた。
その日の放課後、あおいは思い切って彼に尋ねた。どうして、あまり好きではなさそうな水泳の授業に、わざわざ付き合ってくれたのか、と。彼は少しの間黙っていたが、やがて、低い声で呟いた。
「……他の奴らが、君を見てるから」
その言葉の意味を、あおいはすぐには理解できなかった。他の誰が、自分を見ているというのだろうか。考えあぐねていると、彼はいつものように控えめな笑みを浮かべた。あまり乗り気でなさそうだった体育の授業に、彼が参加するようになったのは良いことだ。そう思うと、胸の内で小さく芽生えた疑問は、夏の陽射しに溶けるように消えていった。彼の真意は掴めないままだったが、隣を歩く彼の横顔は、いつもより少しだけ、楽しそうに見えた。
- ムッツリを補強していくスタイルが成功している気がする
- ちなみに高校にあまりプールはない
【3話目 あらすじ】
相手が美形であるという事実は瞬く間に噂になった。文化祭で出し物を決める時も、メイド喫茶と執事喫茶を行うことになり、期待されているのが露骨で相手は迷惑そうだ。それでも主人公が参加すると言うと、相手は付き合うと言った。当日、当然のように相手に視線が集まる中で、主人公は地味にメイドとして勤めた。ところが、主人公に目を付けた客が過剰にスキンシップを取ってくる。困り果てた主人公を救ったのは相手だった。今まで見たことのない鋭い睨みは、客を退かせるのに十分だった。その恐ろしさに主人公まで身を引く。しかし、困ったように笑う相手の笑顔の美しさに、主人公の疑念はやはり霧散した。
夏が過ぎ、文化祭の準備が始まる頃には、後ろの席の彼が実は類稀なる美形であるという事実は、瞬く間に学年中に知れ渡っていた。きっかけは、あの水泳の授業。以来、彼に向けられる視線の種類は明らかに変わり、どこか遠巻きに、しかし熱を帯びたものになった。
文化祭のクラスの出し物を決める会議では、誰が言い出したのか、メイド喫茶と執事喫茶を合同で行うという案が圧倒的な支持を得た。その背景には、彼への期待があるのは誰の目にも明らかだった。クラスメイトたちの興奮気味な視線が一斉に彼に注がれるたび、彼は心底迷惑そうに眉を顰め、長い前髪を更に深く下ろそうとする。その姿は、注目されることを良しとしない彼の性質を如実に表していた。
あおい自身も、人前に立つような派手な出し物は得意ではなかった。しかし、クラスの一員として何もしないわけにもいかず、おずおずと参加の意思を伝えると、隣でうんざりした顔をしていた彼が、小さな声で「じゃあ、俺も」と呟いた。その言葉に、あおいの胸に微かな安堵感が広がったのを覚えている。彼もまた、あおいがいるから参加するのだろうか。そんな淡い期待は、すぐに文化祭の喧騒にかき消された。
文化祭当日。あおいは慣れないメイド服に身を包み、ぎこちない手つきで注文を取っていた。一方、執事服を完璧に着こなした彼は、ただそこにいるだけで周囲の視線を集め、女子生徒たちのため息を誘っていた。彼自身はそんな状況を楽しんでいる様子は微塵もなく、むしろ早くこの時間が終わってほしいとでも言いたげな、どこか不機嫌なオーラを纏っている。
そんな中、あおいに厄介な客が絡んできた。数人の男子生徒グループで、そのうちの一人がやけに馴れ馴れしく、注文とは関係のないことを話し掛け、不必要に肩や腕に触れてくる。あおいは困惑し、どう対処すれば良いか分からず立ち尽くしてしまった。
その時だった。すっと、あおいの前に影が差した。彼だった。いつもの穏やかな雰囲気は消え失せ、まるで鞘から抜き放たれた刃のような、鋭い視線をその客に向けていた。その眼光は、獲物を前にした獣のように冷たく、有無を言わせぬ威圧感を放っていた。客の顔から血の気が引き、慌てたように席を立って逃げるように去っていくのに、そう時間はかからなかった。
彼の放ったあまりの気迫に、あおい自身も思わず一歩後ずさっていた。今まで見たことのない彼の表情。それは、普段の物静かな彼からは想像もつかないほど恐ろしいものだった。あおいの心臓が、恐怖で小さく震える。
しかし、客が完全に立ち去ったのを見届けると、彼はふっと息を吐き、あおいに向き直った。そして、まるで先程の出来事が幻だったかのように、困ったように眉を下げて、はにかむように微笑んだのだ。その笑顔は、先程までの鋭い眼光とは対照的に、どこまでも優しく、そして息を呑むほど美しかった。その完璧な造形美と、どこか庇護欲を掻き立てるような表情のギャップに、あおいの胸に生まれた恐怖と疑念は、またしても春の雪のように儚く溶けていく。
彼がどうしてあのような鋭い視線を放つことができたのか。その疑問は、彼の美しい微笑みの前では、些細なことに思えてしまった。ただ、彼のその行動が、自分に向けられたものだったという事実に、あおいの頬が微かに熱を持つのを感じていた。
- 霧散しまくっていくスタイル
- 文化祭の使いやすそうなネタというのがメイド喫茶とお化け屋敷しか思いつかない
【4話目 あらすじ】
クリスマスイブの夜、主人公は自分にささやかなケーキを買い、帰り道を急いだ。ところが、知らない制服の男達が遮り、強引に主人公の手を引き、ケーキが落ちる。相手の名前を出して何か言っているが、恐怖で主人公には内容がわからない。そこへ相手が現れた。逃げて、と言おうとするも、相手は素早く男達に制裁を加えていく。無表情で確実に沈めていく様子に、主人公は見てはならないものを見た気がした。「ごめん」と謝る相手だが、既に主人公は誤魔化せない。しかし主人公の手を引き家まで送る姿は、間違いなく紳士だった。家の前で、泣きそうな顔でさよならを告げる相手を、引き留めたのは主人公だった。家へ引き入れ、安心させるように手を握る。腕が背中に回されても、主人公は逃げなかった。唇が落ち、相手の理性が崩れ落ちても、主人公は全て受け入れた。
吐く息が白く染まるクリスマスイブの夜。街はイルミネーションで煌めき、恋人たちが寄り添い歩く中、あおいは一人、ささやかなショートケーキをひとつだけ買い求め、家路を急いでいた。温かな部屋で、ささやかな祝祭を一人静かに行うつもりだった。
人気のない路地を抜けようとした、その時だった。見慣れない制服を着た数人の男たちが、行く手を遮るように現れた。低い笑い声と、品のない視線。あおいの心臓が警鐘を鳴らす。男の一人が強引にあおいの腕を掴んだ。抵抗しようとした瞬間、手に持っていたケーキの箱がアスファルトに叩きつけられ、白いクリームが無惨に飛び散った。男たちは、後ろの席の彼の名前を口にしながら何かを言っている。しかし、恐怖で耳が何も拾わない。ただ、彼の名前が、この暴力的な状況と結びついているという事実だけが、冷たくあおいの胸に突き刺さった。
絶体絶命。そう思った瞬間、背後から地を這うような低い声が響いた。
「……何してる」
振り返るまでもなく、彼だとわかった。男たちが怯んだように動きを止める。あおいは、逃げて、と叫びたかったが、声が出ない。次の瞬間、彼は疾風のように男たちの中へ飛び込んでいた。それは、もはや喧嘩というよりも、一方的な制裁だった。彼の動きには一切の無駄がなく、一つ一つの打撃が的確に相手の動きを奪っていく。表情は凍りついたように無表情で、その瞳には何の感情も浮かんでいない。ただ、目的を遂行するためだけの機械のようだ。男たちが次々と崩れ落ちていく様は、あおいにとって、決して見てはならない世界の深淵を覗き込んだような感覚を覚えさせた。
最後の男が地面に沈むと、彼はゆっくりとあおいの方へ向き直った。その顔には、先程までの冷徹さはなく、ただ深い苦悩の色が浮かんでいた。
「……ごめん」
絞り出すような謝罪の言葉。いつもの彼なら、その一言と困ったような笑顔で、あおいの中の疑問や不安は霧散したかもしれない。しかし、今、目の前で繰り広げられた光景は、あまりにも鮮烈だった。もう、誤魔化すことはできない。彼が隠していた、もう一つの顔。
彼は何も言わずにあおいの手を取り、ゆっくりと歩き出した。その手は温かく、力強い。家までの道すがら、彼は何も語らず、あおいも何も尋ねなかった。ただ、握られた手の温もりだけが、現実感を繋ぎ止めているようだった。その姿は、先程の暴力的とも言える制圧とは裏腹に、どこまでも紳士的だった。
家の玄関の前で、彼はようやく立ち止まり、あおいの手を離した。街灯の頼りない光に照らされた彼の顔は、泣き出しそうに歪んでいた。長い前髪の隙間から覗く瞳が、悲痛に潤んでいる。
「……さよなら」
掠れた声で告げられた別れの言葉。それが、彼の出した結論なのだろう。自分のような人間は、あおいの傍にいてはいけない、と。しかし、その言葉を聞いた瞬間、あおいの中で何かが弾けた。気づけば、彼の腕を掴んでいた。引き留めたのは、あおいだった。
言葉もなく、彼の手を引き、自分の部屋へと招き入れる。冷え切った彼の指先を、自分の両手で包み込み、安心させるようにそっと握った。驚いたように目を見開いた彼だったが、やがて、その瞳から一筋の涙が零れ落ちた。あおいは何も言わず、ただ静かに彼を見つめる。
不意に、彼の腕があおいの背中に回され、強く抱きしめられた。彼の肩が微かに震えている。その温もりと、縋るような力強さに、あおいは逃げようとは思わなかった。顔を上げた彼の瞳が、熱を帯びてあおいを見つめている。そして、ゆっくりと唇が重なった。それは、戸惑うような、それでいて渇望するようなキスだった。彼の理性が、音を立てて崩れ落ちていくのがわかった。それでも、あおいは全てを受け入れた。彼の痛みも、彼の業も、そして、彼が抱えるどうしようもないほどの想いも。
窓の外では、聖夜の雪が静かに降り始めていた。
- ケーキを台無しにした上で性夜をやりたかった、満足している
- やったー!雪が降ったぞー!
【5話目 あらすじ】
クリスマスの朝、主人公が目覚めると、隣で既に相手は起きていた。「ごめん」という一言が何について言っているのかは、昨夜色々ありすぎてわからない。この先相手と一緒にいることで自分に何が降りかかるかもわからない。しかし主人公は、共にあることを選び、相手に寄り添った。「ケーキ、買いに行こう」そう言う相手の笑顔は穏やかで、どこまでも優しく、主人公を安心させた。
窓から差し込む柔らかな光で、あおいは目を覚ました。クリスマスの朝。見慣れた自分の部屋の天井。隣には、静かに息をする彼の気配があった。ゆっくりと視線を向けると、彼は既に起きていて、じっとあおいを見つめていた。その瞳は、昨夜の熱とは違う、穏やかな光を宿している。
「……ごめん」
小さな声で彼が呟いた。その一言が、昨夜の出来事のどれを指しているのか、あおいには判然としなかった。路地裏での暴力的な制裁か、それとも、その後、理性の箍が外れたように求められたことか。あるいは、自分のような人間が隣にいること、そのものに対してか。あまりにも多くのことが、昨夜一晩で起こりすぎた。
この先、彼と共にいることで、自分にどのような困難が降りかかるのか、想像もつかない。昨夜垣間見た彼の裏の顔は、決して平穏な日常とは相容れないものだろう。それでも、あおいの心は不思議と凪いでいた。後悔も、迷いもない。ただ、この温もりのそばにいたい、という確かな想いだけがあった。あおいは言葉もなく、そっと彼の方へ身を寄せた。その行動が、彼女の答えだった。
しばらくの沈黙の後、彼がふっと息を吐き、微かに微笑んだ気配がした。そして、優しい手つきであおいの髪を梳きながら、穏やかな声で言った。
「ケーキ、買いに行こう」
昨夜、無残に潰れてしまったケーキ。その言葉は、失われたものを取り戻すというよりも、新しい始まりを告げるようにあおいの耳に届いた。彼の笑顔は、いつかの文化祭で見せた困ったような表情でもなく、路地裏で見せた氷のような無表情でもない。ただひたすらに穏やかで、どこまでも優しく、そして深い安堵に満ちていた。その温かな微笑みは、まるで冬の陽だまりのように、あおいの心をそっと包み込み、言いようのない安心感を与えてくれる。
何が正しくて、何が間違っているのか。そんなことは、もうどうでもよかった。ただ、この優しい笑顔を、これからも隣で見ていたい。あおいは、静かに頷き、彼の手をそっと握り返した。窓の外では、昨日降った雪が陽光を浴びてきらきらと輝いていた。新しい一日が、そして新しい二人の時間が、今、静かに始まろうとしていた。
- ケーキの弁償をしたかったんだよ
- そういえばケーキそのまま捨ててきちゃったな…(今更の後悔)
【6話目 あらすじ】
あれ以降、主人公の身に危険が及ぶことはなかった。恐らく相手が裏で手を回したのだろうが、言及することはない。彼なりのやり方と理性を主人公は信じた。それぞれ大学が決まり卒業も近づく中で、主人公はチョコレートを作っていた。料理は苦手ではないが、誰かに送るのは初めてだった。相手は相変わらずの人気で、机の上にもチョコレートが並ぶ。帰り道、意を決してチョコレートを送ると、相手は前髪をかき上げそれを確かめた。そして主人公を抱き寄せ、相手の家で食べたいと言う。そのまま2人は相手の家へと向かう。そこでいただくのはチョコレートだけではないのだろう。
あのクリスマスの夜から、季節は静かに巡り、あおいの身に危険が及ぶことは二度となかった。街で不良たちの姿を見かけることも減り、かつて感じていた教室の重苦しい空気も、いつの間にか霧散していた。彼が裏で何らかの手を回したのだろうということは、あおいにも容易に想像がついたが、そのことについて彼が口にすることも、あおいが尋ねることもなかった。彼なりのやり方と、その奥にある理性を、あおいは静かに信じていた。ただ、時折見せる彼の表情の奥に、以前よりも深い影と、それ以上の優しさが宿るようになったのを感じていた。
やがて冷たい風も和らぎ、春の気配が近づく頃、それぞれが進むべき大学も決まり、卒業の日が目前に迫っていた。そんなある日、あおいは慣れない手つきでチョコレートを作っていた。料理そのものが苦手なわけではない。けれど、誰かのために、特別な想いを込めて何かを作るのは、これが初めてだった。溶かしたチョコレートの甘い香りが、部屋いっぱいに広がる。
バレンタインデー当日。彼の机の上には、朝からいくつものカラフルな包みが並んでいた。その光景はもはや見慣れたものだったが、やはり彼の人気ぶりを改めて思い知らされる。彼自身は、その一つ一つに丁寧に目を通しているようだったが、その表情はどこか上の空のようにも見えた。
放課後、二人きりになった帰り道。あおいは意を決し、鞄から小さな包みを取り出し、彼に差し出した。心臓が早鐘のように鳴っている。彼は少し驚いたように目を見張り、それからゆっくりと包みを受け取った。そして、いつもは表情を隠している長い前髪を珍しく指でかき上げ、その中身を――あおいが作った、不格好かもしれないチョコレートを――優しい眼差しで確かめた。
次の瞬間、ふわりと彼の香りに包まれた。彼があおいの肩を抱き寄せ、耳元で囁いた。
「……うちで、食べたい」
その声は熱を帯びていて、あおいの頬を微かに赤らませる。彼の家。クリスマスの夜以来、訪れる機会のなかった場所。言葉少なに応じるあおいの手を、彼がしっかりと握る。二人で並んで歩き出す。夕焼けが、二人の影を長く伸ばしていた。
これから向かう彼の家で、いただくのは、きっと、この手作りのチョコレートだけではないのだろう。そんな予感が、甘く、そして少しだけ苦いチョコレートのように、あおいの胸の奥をじんわりと満たしていく。その先に待つ未来がどのようなものかはまだ分からない。けれど、この温かな手を離すことはないだろうと、あおいは確信していた。
- おい、クリスマスイブの夜に行ったのは主人公の家だよ!大ミスだよGemini!
- あまり採用されていないが「ちゃんと受験勉強やってました」っていうことにはしておきたかった
【7話目 あらすじ】
卒業式の後、主人公と相手は2人で歩いていた。相手を引き留める声も多かったが、相手は意に介さず主人公だけを選んだ。大学は別々となるが、そう遠いわけでもない。定期的に会うことを約束し、主人公は満足していた。そこでふと、相手が立ち止まる。振り返った主人公に、相手が笑いかけた。「近いうちに、一緒に住もう」。金銭的な心配はいらないと言う相手に、主人公は相手の家庭に対する疑問が湧く。進学先も有名な国立大学であり、相手は元々エリートであるらしい。しかし、そんな主人公の疑問も、相手のキスの前に霧散する。どんな道でも、相手とであれば大丈夫だという信頼が、そこには根付いていた。
桜の花が、新たな門出を祝うかのように舞い散る卒業式の日。厳粛な式の後、ざわめきと名残を惜しむ声で満たされた校庭を抜け、あおいは彼と二人、並んで歩いていた。卒業証書を抱えた同級生たちが、あちこちで記念写真を撮ったり、別れを惜しんで涙ぐんだりしている。彼を引き留めようとする声も、男女問わずいくつも聞こえてきたが、彼は軽く手を振ってそれに応えるだけで、足を止めることはなかった。その視線は、ずっとあおいに向けられている。その揺るぎない選択が、あおいの胸を温かく満たした。
進学する大学は別々になる。けれど、互いのキャンパスは電車で数駅の距離で、そう遠いわけでもない。これからも定期的に会える。その約束だけで、あおいは十分に満たされていた。これまでの三年間、特にこの一年は、彼がいたからこそ乗り越えられた。その感謝と、これからも続くであろう穏やかな時間への期待が、春の陽射しのように心を照らしていた。
ふと、彼が立ち止まった。あおいもつられて足を止める。振り返ると、彼はどこか真剣な、それでいて優しい眼差しであおいを見つめていた。そして、ふわりと笑いかける。それは、あおいが最も好きな、心からの笑顔だった。
「近いうちに、一緒に住もう」
彼の言葉は、春のそよ風のように、しかし確かな重みを持ってあおいの心に届いた。一緒に、住む。その言葉の意味を反芻する。金銭的な心配はいらない、と彼は付け加えた。その落ち着いた口調と、どこか当たり前のように語る様子に、あおいの胸に小さな疑問が浮かんだ。彼の家庭環境については、これまで深く知る機会も、あえて尋ねようと思ったこともなかった。けれど、彼が進学するのは国内でも有数の国立大学で、その整いすぎた容姿や時折見せる底知れない能力を考えれば、彼が元々特別な環境で育ったエリートなのだろうということは、薄々感じてはいた。その疑問が、彼の言葉によって、より鮮明な輪郭を持ち始めた。
しかし、そんなあおいの胸中の戸惑いを見透かしたかのように、彼はそっとあおいの顔を引き寄せ、その唇に優しく口づけた。柔らかく、慈しむようなキス。その温もりと甘やかさが、あおいの心に生まれたばかりの疑問の蕾を、あっという間に溶かしていく。そうだ、彼がどんな人間であろうと、どんな過去を背負っていようと、もう関係ない。
彼の腕の中で、あおいは静かに目を閉じた。どんな道を選び、どんな未来が待っていようとも、この人と一緒であれば大丈夫だという、確固たる信頼が、いつの間にかあおいの心に深く根付いていた。春の柔らかな光が、二人を優しく包み込んでいる。これから始まる新しい生活への期待と、ほんの少しの不安。それら全てを抱きしめて、あおいは彼にそっと寄り添った。
- 明るい最後にするためにいきなり相手をハイスペック化
- しかし裏番長としてグレてたあたり家庭環境はあまり健全ではなさそう
- あと顔の良さはエリートさと関係ないと思うよ
ここまでを踏まえて、1話目を相手視点でお願いします。
春特有の浮ついた空気は好きではなかった。新しいクラス、新しい人間関係。そんなものに心を躍らせる年齢でもない。ましてや、この息苦しい仮面を被り続ける日常に、変化など求めていなかった。だというのに、教室の扉が開かれ、担任に連れられて入ってきた小柄な転校生を目にした瞬間、世界から音が消えたような錯覚に陥った。
彼女――あおいという名前らしい――は、ひどく緊張した面持ちで、頼りなげに周囲を見回していた。その姿が、なぜかひどく目を引いた。守らなければならない、か弱い存在。そう直感的に感じた。そして、その直感と同時に、胸の奥底で、今まで感じたことのない種類の熱がじわりと生まれたのを自覚した。一目惚れ、という陳腐な言葉で片付けるには、あまりにも鮮烈な衝撃だった。
彼女が指定された席は、俺のすぐ前だった。偶然に感謝した。できることなら、この場所から一歩も動きたくない。授業が始まっても、教科書の内容など少しも頭に入ってこなかった。ただ、彼女の背中を、時折小さく揺れる髪を、盗み見るだけで精一杯だった。
不意に、彼女が何かを探すように小さく動いた。その拍子に、彼女の机から黒いボールペンが転がり落ち、俺の足元へとやってくる。まるで運命が手招きしているかのようだ、と思ったのは一瞬。咄嗟に、まるでそれが当然であるかのように、俺もまたペンを落とした。わざとらしくならないように、細心の注意を払って。計画通り――いや、これは計画などではない、ただの幸運だ――彼女が俺のペンではなく、自分のペンを先に拾い上げ、そして、俺が落とした(と彼女は思っている)ペンを拾って、こちらに差し出してくれた。
「…ありがとう」
掠れた声しか出なかった。もっと気の利いた言葉を返すべきだったのかもしれない。しかし、彼女の細い指が触れたペンの温もりと、眼鏡越しでもわかる真摯な眼差しに、思考が追いつかない。ただ、この瞬間が永遠に続けばいいと、柄にもなく願った。
それから、俺たちの間には、ぎこちないながらも少しずつの会話が生まれた。彼女は口数が多い方ではなかったが、その沈黙が心地よかった。同じ種類の人間なのかもしれない、と思った。人混みを嫌い、静けさを愛する性質。だからこそ、彼女の隣は得難い安息の場所だった。しかし、同時に、この感情が深入りしすぎないように、常に自分に言い聞かせなければならなかった。彼女を、俺の世界の闇に引きずり込んではならない。絶対に。
そんな矢先、彼女がクラスの不良グループに怯えていることに気づいた。休み時間、彼らが騒ぐたびに、彼女の肩が小さく震えるのを見逃しはしなかった。そしてある放課後、彼女は意を決したように、その不安を俺に打ち明けてくれた。その声は震え、瞳には怯えの色が浮かんでいた。その瞬間、腹の底から冷たい怒りが湧き上がってくるのを感じた。俺が守ると決めた彼女を、脅かす存在は許さない。
彼女が帰った後、俺は即座に行動に移した。表の番長に軽い「お願い」をし、件のグループには直接「指導」を入れた。力を見せつけるのは本意ではないが、彼女の平穏のためなら手段は選ばない。数日後、教室の空気が目に見えて変わったことに、彼女は不思議そうな顔をしていたが、深く追及してくることはなかった。それがありがたかった。
廊下で、以前彼女を脅していた連中が俺の姿を見て道を譲るのを、彼女が目撃したかもしれない、と感じた瞬間があった。慌てて、いつものように前髪で表情を隠し、控えめな笑顔を意識して浮かべる。この真面目そうな外見は、こういう時に役に立つ。彼女の疑問が、春霞のように霧散していくのを感じて、内心で深く息をついた。
彼女がペンを拾ってくれたあの日から、俺の世界は確実に色を変えた。灰色だった日常に、柔らかな光が差し込んだように。この光を失いたくない。そのためなら、どんな代償も払う。彼女の隣にいられるこの奇跡のような時間を、一日でも長く。そう願いながら、俺は今日もまた、彼女の前ではただの「後ろの席の地味な同級生」を演じ続ける。この仮面の下に隠した激情を、彼女に気づかれることがないように。そして、いつか、この感情が穏やかな陽だまりのようなものに変わる日を夢見ながら。
- ペンが落ちすぎてわけわからないので薄目で見ることにする
- 裏側で順調に悪いことやってて何より
2話目を相手視点でお願いします。
時折、俺は学校を抜け出す必要があった。それは、この平穏な仮面の下に隠された、もう一つの顔が求める「仕事」のためだ。埃と鉄錆の匂いが染みついた場所で、顔も知らない連中を黙らせ、秩序を維持する。そんな時でさえ、頭の片隅には常に彼女――あおいの姿があった。俺がこうして影で動いていることを、彼女は何も知らない。そして、何も詮索しようとはしない。その事実に、どれほど救われていることか。
夏が近づき、体育で水泳の授業が始まると知った時、まず頭に浮かんだのは彼女のことだった。内向的で、人前に肌を晒すことなど好むはずがない。案の定、彼女の表情は日に日に曇っていった。その憂鬱な横顔を見るたび、胸が締め付けられるような感覚に陥った。そして同時に、黒い感情が鎌首をもたげる。彼女の肌が、他の男たちの目に触れることへの、どうしようもないほどの嫌悪感と独占欲だ。
ある放課後、彼女がぽつりと、その憂鬱な気持ちを俺に打ち明けてくれた。頼りない声で、水泳が苦手なのだと。その瞬間、彼女が自分を頼ってくれたという事実に、密かな喜びが込み上げた。そして、決意した。
「じゃあ、俺も付き合う」
そう口にした時、彼女は少し驚いたような顔をしたが、やがて小さく頷いた。彼女には、俺も水泳が苦手だから付き合う、くらいにしか思われなかっただろう。それでいい。本当の理由は、口が裂けても言えるはずがない。君を、他の奴らの視線から守るためだ、なんて。
水泳の授業当日。更衣室で制服を脱ぎ捨てながら、微かな緊張を覚えていた。普段は眼鏡と前髪で隠している素顔と、着痩せすると言われるこの身体を、彼女がどう見るだろうか。プールサイドに出ると、案の定、いくつかの視線が突き刺さるのを感じたが、そんなものはどうでもよかった。俺の目は、ただ一人、あおいの姿を探していた。
彼女が、少し俯き加減にプールサイドへ現れた。いつもより無防備に見えるその姿に、心臓が不規則に跳ねる。俺が眼鏡を外し、何気ないふりで彼女の方へ視線を向けた瞬間、クラスの空気が変わったのを肌で感じた。男女を問わず、好奇と驚嘆の入り混じった視線が集中する。だが、俺が捉えたかったのは、ただ一つ。あおいの、息を呑む気配。彼女が、確かに俺を見て、一瞬動きを止めたこと。それだけで、言いようのない満足感が全身を駆け巡った。
授業中、俺は執拗に彼女だけを見つめ続けた。他の生徒が何をしていようと関係ない。俺の視界には、水に濡れた彼女の姿だけがあった。時折、こちらを気にするような素振りを見せる彼女。その戸惑いさえも愛おしく、そして、他の誰にも彼女を見せたくないという凶暴なまでの独占欲が、俺を駆り立てた。彼女が居心地悪そうにしているのは分かっていたが、視線を逸らすことなどできなかった。これは俺なりの牽制だ。彼女に無遠慮な視線を向ける全ての者たちへの。
その日の放課後、彼女は思い詰めたような顔で、なぜ水泳に付き合ってくれたのかと尋ねてきた。言葉を選ぶ。本当の気持ちをどこまで伝えられるのか。
「……他の奴らが、君を見てるから」
それは、紛れもない本心だった。他の男たちが、彼女をいやらしい目で見ることも、彼女の純粋さを僅かでも汚すことも許せない。俺の言葉の真意を、彼女はどこまで理解しただろうか。少し考え込むような素振りを見せた後、彼女は意外にも納得したような顔で、体育に参加するのは良いことだ、と解釈したようだった。その純粋さが、愛おしくもあり、もどかしくもある。
結局、俺の行動は、彼女にとって「親切なクラスメイト」の範疇を出ないのかもしれない。それでもいい。今は、それでいい。彼女の傍にいられる理由が、彼女を守る口実ができたのだから。この仮面の下で燃え盛る想いを悟られぬよう、俺は今日もまた、慎重に距離を測り続ける。彼女の知らないところで、彼女に降りかかるであろう全ての厄介事を、この手で排除しながら。
- 仕事だった、奴は思ったより真面目だった
- 「鎌首をもたげる」は目立つ割に頻繁に出てくる表現なので薄目で見ようね
- むっつりを通り越して重めなのは私の今までの依頼にそういう傾向があるのかもしれない
3話目を相手視点でお願いします。
あの忌々しい水泳の授業以来、俺の日常は僅かに、しかし確実に変化していた。眼鏡と前髪という二重の盾で隠してきたはずの素顔が、あることないこと噂され、物珍しげな視線に晒される機会が増えたのだ。鬱陶しいことこの上ない。だが、それ以上に懸念していたのは、この騒がしさが彼女――あおいとの間に築き上げてきた静かで穏やかな関係を侵食してしまうのではないか、ということだった。
そんな矢先に持ち上がった文化祭の出し物。メイド喫茶と執事喫茶の合同開催だと聞いた瞬間、内心で深く舌打ちした。クラスの連中の、特に女子生徒の期待を一身に浴びるのが目に見えている。目立つのはごめんだ。俺はただ、あおいの隣で、変わらない日々を過ごしたいだけなのだから。
しかし、そのあおいが、おずおずとではあるが参加の意思を示した時、俺の決心は揺らいだ。彼女を一人、あの喧騒の中に放り出すわけにはいかない。それに、万が一にも、彼女に変な虫がつかないとも限らない。結局、ため息と共に「じゃあ、俺も」と口にしていた。彼女が少し安堵したような表情を見せたことに、複雑な感情が胸をよぎる。俺が参加するのは、決して乗り気だからではない。全ては、君のためだ、あおい。
文化祭当日。着慣れない執事服に身を包み、鏡に映る自分を見て自嘲気味に鼻を鳴らした。こんな格好で一日中、品定めするような視線に晒されるのかと思うと、今すぐにでも逃げ出したかった。だが、それ以上に俺の心を乱したのは、メイド服に身を包んだあおいの姿だった。いつも控えめな彼女が、フリルのついたエプロンをつけ、少し緊張した面持ちで立っている。その破壊的なまでの愛らしさに、一瞬、呼吸を忘れた。同時に、腹の底からどす黒い独占欲が湧き上がる。この姿を、他の誰にも見せたくない。
表面上は無感動を装い、押し寄せる客を淡々と捌きながらも、神経の全てはあおいの動向に注がれていた。そして、恐れていた事態は起きた。数人の男子生徒が、明らかにあおいに目をつけて馴れ馴れしく絡み始め、挙句の果てには彼女の肩に手を伸ばしたのだ。
その瞬間、俺の中で何かが切れた。普段、理性という名の分厚い壁で厳重に封じ込めている衝動が、堰を切ったように溢れ出す。気づけば、その客の前に立ちはだかり、言葉を発するよりも先に、凍てつくような視線を浴びせていた。それは、裏の世界で幾度となく相手を屈服させてきた、本物の殺気だった。客の顔から血の気が引き、狼狽しながら逃げ去っていくのを見届ける。
だが、勝利感など微塵もなかった。振り返った先に見たのは、恐怖に引きつったあおいの顔だったからだ。俺の放った気配に、彼女までが怯えている。最も見られたくなかった、自分の汚れた一面を、彼女に見せてしまった。血の気が引くような絶望感が全身を襲う。これで、終わりかもしれない。
咄嗟に、必死の思いで表情筋を総動員し、「困ったような笑顔」を顔に貼り付けた。内心では、今にも泣き出しそうな彼女に土下座でもしたい気分だったが、そんなことをすれば余計に混乱させるだけだろう。ただ、ひたすらに、いつもの「人畜無害な同級生」を演じるしかなかった。幸い、彼女は深く追及することなく、いつものように俺の行動を自分にとって都合の良いように解釈してくれたようだった。そのことに安堵すると同時に、鋭い罪悪感が胸を刺す。
文化祭の喧騒が嘘のように遠く感じられた。彼女の隣にいながら、心は荒れ狂う嵐のようだ。彼女を守るために振るった力は、皮肉にも彼女自身を怯えさせた。この矛盾を、俺はどうすればいいのだろう。彼女の無垢な信頼が、今はただ重く、そして痛い。いつか、本当の俺を知った時、彼女はこの手を取ってくれるのだろうか。その答えを知るのが、今はただ恐ろしかった。
- 順調にムッツリどす黒くなって参りました
- こういうところGPTだと甘く柔くなりやすいのでGeminiがおすすめっていう話
4話目を相手視点でお願いします。
聖夜の喧騒は、俺の心の奥底に渦巻く孤独を際立たせるだけだった。あおい。彼女の名前を胸の内で繰り返す。今頃、彼女は何をしているだろうか。ささやかなケーキでも買って、一人で過ごしているのだろうか。そんな想像をするだけで、胸が締め付けられる。何か、彼女のためにできることはないのか。しかし、俺のような存在が彼女の特別な夜に関わること自体が、彼女の清浄な世界を汚すことになるのではないかという恐れが、常につきまとっていた。結局、俺にできるのは、彼女の帰路の安全を、気づかれぬように遠くから見守ることだけだった。それが、俺なりの歪んだ愛情表現だったのかもしれない。
その夜も、そうするつもりだった。だが、いつもより胸騒ぎが酷い。嫌な予感が、冷たい風と共に肌を刺す。早足に彼女が使いそうな道へと向かうと、路地の奥から、聞き慣れた彼女のものではない、下卑た男たちの声と、そして、――俺自身の名前が聞こえてきた。血の気が引いた。最悪の事態だ。自分の存在が、ついに彼女を直接的な危険に晒してしまった。
路地に飛び込むと、そこには予想通りの光景が広がっていた。数人の見慣れない制服の男たちが、あおいを取り囲み、その腕を掴んでいる。彼女の足元には、無惨に潰れたケーキの箱。彼女の顔は恐怖に歪み、その瞳には涙が浮かんでいた。その瞬間、俺の中で何かが猛り狂った。自分自身への激しい怒り、そして、彼女をこんな目に遭わせたクズどもへの容赦ない殺意。
もはや、ためらいはなかった。感情を無にすることで、逆に力を最大限に引き出す。最短で、確実に、そして二度と彼女に近づけないように、奴らを沈黙させる。一人、また一人と崩れ落ちていく男たち。その間も、背中に感じるあおいの怯えた視線が、まるで鋭い刃のように突き刺さっていた。見られた。俺の、最も汚れた部分を。
全てが終わった静寂の中で、彼女の方へ向き直る。どんな顔をすればいいのか分からなかった。ただ、絞り出すように「ごめん」とだけ口にできた。それは、守りきれなかったことへの謝罪であり、こんな醜態を晒したことへの謝罪であり、そして、もう彼女の隣にはいられないという絶望の表明でもあった。
彼女の手を取り、家まで送る道すがら、一言も発することができなかった。握りしめた彼女の手の温かさが、今はただ辛い。この温もりを手放さなければならない。それが、彼女のためだ。そう自分に何度も言い聞かせた。家の前で、震える声で「さよなら」と告げた。彼女の幸せを願うなら、これが正しい選択のはずだ。
だが、俺の腕を掴んだのは、あおいだった。驚きに見開かれた彼女の瞳。そこには、怯えではなく、何か強い意志のようなものが宿っているように見えた。言葉もなく彼女の部屋に招き入れられ、その小さな手が俺の冷え切った指を包み込んだ瞬間、張り詰めていたものが、音を立てて崩れ落ちていくのを感じた。
もう、限界だった。彼女の存在そのものが、俺の理性を揺るがす。抱き寄せずにはいられなかった。そして、吸い寄せられるように唇を重ねた。その瞬間、何ヶ月も、いや、彼女と出会ってからずっと、心の奥底に封じ込めてきた激情が、堰を切ったように溢れ出した。それは、純粋な愛情だけではない。もっと生々しく、どす黒い独占欲と、飢えた獣のような欲望。
しかし、彼女は逃げなかった。それどころか、全てを赦すように、俺の全てを受け入れてくれた。その事実に、打ち震えるほどの感動と、もはや後戻りはできないという覚悟が胸を満たす。
窓の外で、雪が静かに降り始めていた。まるで、このどうしようもない俺たちの罪を、世界から隠してくれるかのように。この夜のことは、決して消えないだろう。そして、もう二度と、彼女から離れることも、離れられることもない。俺は、そう確信していた。
- 不良どころか暗殺者みたいな感じになってる…
- でもやっぱり「理性的」の設定がちゃんと活きてるんだなと感じる、というかそうでないと視点反転した途端に理性が働いてなかったみたいなことが結構ある
5話目を相手視点でお願いします。
窓の外が白み始める頃、腕の中で眠るあおいの寝顔を、俺は飽きず眺めていた。規則正しい寝息、微かに開いた唇、長い睫毛。その全てが愛おしく、同時に、昨夜の記憶が容赦なく胸を抉った。彼女の純粋さを、俺自身の業で汚してしまったのではないか。あの暴力的な姿、そして、抑えきれなかった欲望。後悔と罪悪感が津波のように押し寄せる一方で、彼女が俺を受け入れてくれたという事実が、今まで感じたことのないほどの深い充足感と温もりをもたらしていた。この矛盾した感情の中で、俺はただ、彼女が目を覚ました時、どんな顔で俺を見るのだろうかと、そればかりを考えていた。
やがて、彼女の睫毛が微かに震え、ゆっくりと瞼が開かれた。俺は息を詰めて、その瞬間を待った。拒絶されるかもしれない。軽蔑されるかもしれない。そんな恐怖が心を締め付ける。彼女の澄んだ瞳が、じっと俺を捉えた。
「……ごめん」
やっとの思いで絞り出した言葉は、あまりにもありきたりで、昨夜の俺の愚行を償うには到底足りないものだった。暴力的な衝動を彼女に見せてしまったこと、理性の箍が外れ、彼女を求めてしまったこと、そして何より、俺のような人間が彼女の隣にいること。その全てに対する、心からの謝罪のつもりだった。
彼女は何も言わなかった。ただ、その大きな瞳で俺を見つめ返すだけだ。沈黙が重くのしかかる。だが次の瞬間、彼女はゆっくりと身を寄せ、俺の胸にそっと頭を預けてきた。その小さな行動が、どんな言葉よりも雄弁に彼女の想いを伝えてきた。赦し、そして受容。張り詰めていたものが、涙と共に溶け出していくのを必死で堪えた。彼女のこの強さと優しさに、俺はまたしても救われてしまったのだ。
もう、迷いはない。彼女が俺を選んでくれた。この事実だけで、俺はどんな困難にも立ち向かえる。これからは、俺が彼女を全力で守り、幸せにする番だ。
ふと、昨夜のケーキの残骸が頭をよぎった。あの時、彼女がどれほど悲しい思いをしただろうか。失われたものを取り戻すことはできないかもしれない。だが、新しい思い出を、二人でこれからたくさん作っていけばいい。
「ケーキ、買いに行こう」
できるだけ穏やかな声で、そう提案した。それは、途切れてしまった日常への回帰であり、彼女への小さな償いであり、そして何よりも、二人で新しい一歩を踏み出すための、ささやかな約束のつもりだった。
彼女は小さく頷き、その表情に微かな安堵の色が浮かんだのを見て、俺の口元にも自然と笑みがこぼれた。それは、いつものような計算された笑顔ではなく、心の底からの、穏やかで温かいものだったと思う。
クリスマスの朝の清浄な光が、部屋いっぱいに満ちていく。この腕の中にある温もりと、彼女の揺るぎない信頼を胸に、俺は新しい今日を生きていく。どんな未来が待ち受けていようとも、もう何も恐れることはない。彼女が、そばにいてくれるのだから。
- ちゃんと理性的に幸せルート行って良かった、ちょっと重いけど
- 夢小説において喋らせるかどうかは難しく、例えばこういう時に頷いたり身を預けたりすることが多くなる
6話目を相手視点でお願いします。あと、元の6話目では彼の家=4話以降行っていないとなっていますが、4話で行ったのは主人公の家であり、6話で行くのは彼の家=初めて行く、なので、そこだけそっと訂正しておいてください。
あの聖夜の奇跡から数ヶ月。俺はあおいの日常から、あらゆる脅威となり得る要素を徹底的に排除することに全力を注いだ。それは時に、決して清廉とは言えない手段を伴ったが、彼女のあの穏やかな微笑みが守られるのであれば、どんな泥を被ろうと厭わなかった。あおいは何も尋ねてこなかったが、俺の行動の意図を、その聡明さで静かに理解し、信頼してくれているようだった。その無言の絆が、俺にとっては何よりの救いであり、力だった。
季節は巡り、卒業の日がすぐそこまで近づいていた。彼女と共に過ごせる教室での時間も、残りわずか。一抹の寂しさを感じずにはいられないが、それ以上に、これから始まる新しい生活、そしてその先の未来を彼女と共に歩んでいけるという期待が胸を満たしていた。俺たちの関係は、あの夜を経て、誰にも揺るがすことのできない確固たるものになったと信じている。
バレンタインデー当日。朝から校内は浮ついた空気に包まれ、俺の机の上にも、見慣れた光景ではあるが、いくつかの包みが置かれていた。しかし、そんなものはどうでもいい。俺の意識はただ一点、あおいの動向だけに集中していた。彼女が、何か特別な行動を起こしてくれるのではないか――そんな淡い期待を抱いている自分に気づき、小さく自嘲する。たとえ何もなくても、俺の彼女への想いが変わるわけではないのだから。
放課後、二人きりになった帰り道。いつもより少しだけ緊張した面持ちの彼女が、鞄から小さな、しかし丁寧にラッピングされた包みを取り出し、俺に差し出した。その瞬間、時が止まったかのような感覚に襲われた。彼女の白い指先、ほんのり赤らんだ頬、そして、期待と不安が入り混じったような瞳。その全てが、俺の心を強く揺さぶった。
「……ありがとう」
掠れた声でそれだけを言うのが精一杯だった。包みを受け取ると、彼女の温もりが伝わってくるようだった。衝動的に、その華奢な肩を抱き寄せていた。驚いたように小さく息を呑む彼女の気配を感じながら、俺は決意を固める。
「うちで、食べたい」
そう告げると、彼女はこくりと頷いた。俺の家。これまで、彼女を招き入れたことのない、俺だけの聖域。クリスマスの夜は、彼女の優しさに甘え、彼女の部屋で過ごさせてもらった。だが、今度は違う。俺の世界に、正式に彼女を迎え入れたい。初めて見せる俺の部屋で、彼女が作ってくれたチョコレートを、二人きりで味わいたい。
彼女の手を取り、夕暮れの道を歩き出す。これから向かう場所は、ただの住居ではない。俺の全てが詰まった空間であり、そして、これから彼女との未来を築いていくための城だ。その扉を開ける時、彼女はどんな顔をするだろうか。
家に着き、鍵を開けて彼女を招き入れる。二人きりの静かな空間。テーブルの上に置かれたチョコレートの包みを見つめながら、俺は確信していた。今宵、俺たちがいただくのは、この甘いチョコレートだけではないだろう、と。彼女の全てを、この腕の中に閉じ込めてしまいたいほどの強い欲望と、それを優しく包み込む無限の愛情が、俺の中で静かに燃え上がっていた。
- そっとって指示しただろ!激しく訂正すんな!
- やっぱり裏では汚かったらしい
- 例えばこういう表現をR指定すべきなのかちょっとよくわからん
7話目を相手視点でお願いします。
舞い散る桜吹雪が、古い校舎との別れを惜しむかのように視界を白く染める。卒業式という名の儀式は終わり、周囲は解放感と一抹の感傷に満ちていた。だが、俺の心は驚くほど静かで、そして明確な未来への期待に満たされていた。その中心には、もちろんあおいがいる。
あちこちから俺を呼ぶ声が聞こえてきたが、そんなものは耳を素通りしていく。俺の目は、ただ彼女の姿だけを追っていた。三年間、特にこの一年は、彼女の存在が俺の世界の全てだったと言っても過言ではない。そして、これからもそうだ。
「これで、ようやく邪魔が入らなくなるな」
独りごちるように呟きながら、彼女の隣を歩く。大学は別々になるが、そんなことは些細な問題だ。俺たちの時間は、これからいくらでも作り出せる。定期的に会う約束など、彼女にとっては安心材料の一つかもしれないが、俺にとっては最低限のラインでしかない。もっと深く、もっと濃密に、彼女の全てを俺の日常に溶け込ませたい。
通い慣れた校門を抜け、二人きりになったタイミングを見計らい、俺は立ち止まった。振り返った彼女の、少し不思議そうな顔。その表情が愛おしくて、思わず笑みがこぼれる。
「近いうちに、一緒に住もう」
それは、衝動的に口にした言葉ではない。ずっと前から、俺の中で練り上げてきた計画の第一歩だ。彼女を、俺の人生のパートナーとして正式に迎え入れるための。驚いたように目を見開く彼女に、さらに言葉を重ねる。
「金銭的なことは、何も心配いらない」
彼女の瞳に、一瞬、戸惑いや疑問の色が浮かんだのを見逃しはしなかった。俺の家庭環境や、時折見せる尋常ならざる能力について、彼女が何も感じていなかったわけではないだろう。進学先が国立大学というのも、彼女の中で何らかの憶測を呼んでいるのかもしれない。いずれ、話すべき時が来る。だが、今は言葉を尽くすよりも、彼女に安心してもらうことが先決だった。
そっと彼女の顔を引き寄せ、その柔らかな唇に自分のそれを重ねた。全ての疑問や不安が、この温もりの中に溶けてしまえばいい。言葉では伝えきれない想いを、このキスに込めて。
彼女が、そっと俺の背中に手を回したのを感じ、胸の奥が熱くなる。そうだ、彼女はいつもこうして、俺の全てを受け止めてくれる。どんな道を選ぼうと、彼女が隣にいてくれる限り、俺は決して迷わない。この深い信頼こそが、俺たちの未来を照らす最も明るい光なのだから。
腕の中の温もりを確かめるように、もう一度強く彼女を抱きしめた。春の柔らかな陽光が、新しい生活の始まりを祝福しているかのようだった。
- 「尋常ならざる能力」言いよったな…
- まあいいや、特に不安要素なくハッピーエンド、おめでとうございます